大学生の就職活動/就職活動での内定から入社まで

就活の内定辞退・取り消しの対応法と内定後にすべきこと

内定が就職活動のゴールではない。まず内定をもらう意味を理解することが大事。次に、内定辞退の正しい方法や連絡の仕方と、内定取り消しに遭った時の対処法を理解しよう。そして、不安なく残りの大学生活を安心して過ごそう。

執筆者:見舘 好隆

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内定をもらったあとにすべきこと

就活の内定辞退・取り消しの対応法と内定後にすべきこと

内定をもらった時に、人生最大の決断をしなくてはならない事をよく考えよう


内定とは、文字通り、内々で定まることである。内々といっても後述の通り、これは正式な雇用契約であり、企業は簡単には解除できない。

日本経団連による大学卒業予定者・大学院修了予定者等の「採用選考に関する企業の倫理憲章」に基づけば、採用内定は卒業年度の10月1日以降と決まっているので、9月30日以前は内々定となる。もちろん、採用活動は4月1日以降しか建前上できないので、例えば4年生大学における3年生時点での内々定は、「内々定の内定」となる。言い換えれば「何となく内々定」だろうか(以降、表記を内定に統一する)。

さて、やっと企業から内定の連絡があった。ここで押さえるべきポイントを列記する。

●書面をもらうまでは安心しない
念願の内定。特に第一志望であれば即、就職活動を辞めるだろう。しかしちょっと待ってほしい。まず第一に押さえるべきポイントは、内定は書面をもらうまで安心できないことだ。メールならまだしも、電話だけでは内定をもらった証拠は録音でもしない限り残らない。こんなご時世、企業もいつ前言撤回するかはわからない。ぬか喜びにならないように、書面が届くまでは就職活動を続けよう。

●もう一度自分に問いかける
内定が書面で届いた。つらかった就職活動、もう止めてしまいたい衝動に駆られるだろう。内定先が第一志望であればなおさらだ。しかし、ここでもちょっと待ってほしい。最初に入社する企業は君の人生に多大なる影響を与える。なぜならば、新卒採用は可能性を評価して採用してくれるが、中途採用は即戦力すなわち現在しか評価をしてくれない。よって最初に就いた仕事は人生後々まで影響するのだ。

入社する会社を決めることは、結婚相手を決めるに等しいぐらいの人生の大いなる決断であり、決して急いではならない。もちろん、内定は笑顔でもらおう。そして本当にこの企業でいいのか、じっくり時間をかけて悩もう。

●複数内定を取ることを考える
1社内定が取れたということは、これからも内定が取れる可能性があるということでもある。内定を持つことで心に余裕も生まれるだろう。よって安易に即断するのではなく、2社内定をもらって比較して決めた方がいい。

複数内定を持つことに後ろめたさを感じるかもしれないが、企業が君を選んだように、君も企業を選んでいいのだ。もちろん、親戚や先生などの紹介(いわゆるコネ)であれば、二股をかけることは難しいだろう。しかし、最終的には君の人生である。君の人生は何ものにも代え難いはずだ。後述する内定辞退の基本を押さえつつ、土下座するぐらいの覚悟さえあればいいのだ。簡単に自分の将来を決めるステージから、降りてはいけない。

●迷った時はひとりで悩まない
この企業に決めていいのかどうか悩んだ時は、まずは親、そして友人や先生に相談してみよう。特に親は今まで君にたくさんの労力とコストを投資してくれた人だ。決めるのは君自身だが、決めてから反対されても困るので、進捗報告も兼ねて相談しよう。

次にするべきことは、内定先の人事に相談することだ。言いにくいかもしれないが、それで内定を取り消されることはない。逆に何も言わずに辞退された方が寂しいのだ。悩みを打ち明ければ、きっと職場を見せてくれたり、先輩社員を何人も紹介してくれるだろう。決め手がないのだから、決め手をもらいに行こう。

最後に、内定者と会って話すことをお勧めする。きっと内定者親睦会があるはずだから、そこで決めてもいいだろう。なぜならばこれから進学・留学でもしない限り、彼らは人生最後の同期である(転職の場合、同期入社は生まれにくい)。新入社員時代の苦しみを共有しながら、お互い励まし合い、頑張っていく仲間なのだ。その仲間に魅力を感じるかどうかは、入社を決意する大きな決め手となるだろう。
 

内定辞退の連絡方法は「早く・電話」で

内定辞退に怖気づいてはならないし、軽く考えてもいけない

内定辞退に怖気づいてはならないし、軽く考えてもいけない


内定を持ちながら就職活動を行えば、必ず内定を辞退する場面に出くわすだろう。内定辞退を行う時に押さえるべきポイントを列記する。

●内定辞退の法律的な定義とは
内定とは労働基準法上では入社予定日を就労の始期とする労働契約と解されている。よって、内定辞退も労働契約の解除となる(内々定も含む)。

労働基準法では、労働契約の解除は、企業に解除の意思表示をしてから2週間で雇用契約を解約できると定められている。つまり、入社日の2週間前だったら、法律的に全く問題がないことになる。しかし、物理的に損害を与えた場合は、損害を請求されることはあり得る(例:航空券や住まいを用意したなど)。そして、物理的に損害を与えていなくても、期待に添えず、多かれ少なかれ迷惑をかけたわけなので、その迷惑がかかる人への気持ちをよく汲んで行動するべきだ。

●内定辞退は1秒でも早く連絡を!
内定を辞退すると決めたなら、1秒でも早く伝えることが大原則である。なぜなら時間をかけることで、人事にも他の学生にも迷惑がかかるからだ。

まず人事にとって、辞退者が出ることでまた採用活動を開始しなければならない可能性がある。辞退者を想定して内定を出していれば、もしくは内定者が減ってもよいと考える企業であれば問題ないが、少数しか内定を出さない企業であれば、追加で学生を募集することになる。まだ選考中の学生がいればその中から選べばいいが、いなければまた求人告知、説明会、筆記、面接を一からやりなおすことになる。広告費・郵送費・会場費・テスト代・印刷費・人件費などなど、数百万円レベルの出費だ。わざわざ憎まれることをする必要はない。

また、君が早く辞退することで、次点の学生に内定が出る可能性がある。君がダラダラ無意味に辞退を伸ばせば、次点の学生を生殺しにすることになり、もし予定採用数を減らしたまま採用を終了すれば、次点の学生の将来にも影響を与える。よって、内定辞退は1秒でも早く伝えなくてはならないのだ。

●内定辞退の方法について
まず、メールや手紙で辞退してはいけない。1秒でも早く辞退することこそ誠意であって、数日かかる手紙はありえない。メールも必ず届くとは限らないし、担当者がメールを毎日読むかどうかも分からない。よって、一刻も早く電話で辞退することが大原則となる。

そして、まずは今まで返事を待ってくれた人事担当者に直接口頭で伝えることが肝要だ。その担当者が不在の場合は、代わりに電話を取った社員に辞退する旨を伝え担当者に伝言をお願いしつつ、いつお戻りかを確認した上で再度電話することが望ましい。出張か何かでその日に戻らない場合は、別の担当者に伝え、後日、担当者に電話するのがいいだろう。担当者にこだわるのは、少なくとも今までお世話になったことのお礼と、迷惑をかけたお詫びを伝えたいからだ。

「辞退にそこまで気を遣う必要あるのか」と考える人もいるかもしれない。しかし、大した手間暇がかかるわけでもないし、その人と再会する可能性がゼロではないのだ。去る鳥跡を濁さず。相手がすっきりと理解してくれることを目指して、丁寧にふるまうことを意識しよう。
 

内定取り消し(内定切り)に遭った時の対処法

内定取り消しに遭っても泣き寝入りしちゃだめだ

内定取り消しに遭っても泣き寝入りしちゃだめだ


2009年3月卒業の大学生に対し、内定取り消し(内定切り)が頻発したことは記憶に新しい。原因はアメリカの金融危機に端を発した世界的な経済不況。各企業は人件費の圧縮に着手し、中小企業はもちろん大手企業でさえも、非正規労働者の雇止めや解雇、派遣切りが相次ぎ、そして大学生の内定者の内定取り消しも多発した。今年も同じような状況に陥る可能性は否定できない。内定取り消しの対処法を紹介する。

内定取り消しの法律的な定義とは
前述した通り、新卒の内定は「始期付解約権留保付雇用契約」となる。始期付きとは、入社予定日である4月1日からという意味である。解約権留保付とは、内定者固有の解約があるという意味だ。労働基準法第18条および労働契約法第16条に明記されているように、解雇は客観的に合理的な理由が必要である。この「客観的に合理的な理由」とは一般的に以下の4つで、最も問題になるのが3つ目の経営上の必要性に基づく理由の解釈である。
 
  1. 労働者の労務提供の不能や適格性の欠如・喪失
    (例)単位不足や病気、怪我など
  2. 労働者の規律違反の行為
    (例)大麻を吸って逮捕された、履歴詐称など
  3. 経営上の必要性に基づく理由
    ※後述する
  4. ユニオンシップ協定(会社と労働組合の契約)に基づく理由
    ※内定者は対象外

内定取り消しに必要な経済的理由とは
経営上の必要性に基づく理由として合理的であることを示すには、以下の整理解雇の4要件を満たさなければならない。
 
  1. 人員削減の必要性があること
  2. 解雇回避の努力(希望退職者の募集や配置転換・出向など)をしたこと
  3. 整理基準と人選の合理性があること。しかし内定者はまだ働いていないので理由にならない
  4. 解雇手続の妥当性があること。つまり、内定者に整理解雇の必要性やその内容(時期・規模・方法など)について十分説明し、誠意をもって協議したこと

もちろん最終的には裁判所の判断になるが、基本的にはこの4要件すべてを検討した結果、客観的に妥当であることを示さなければ不当解雇であり、内定取り消しは無効となるのだ。よって、法律的に内定取り消しが適法となるケースはほとんどない。
 

その場で同意せず、周囲に相談する

通常、企業には顧問弁護士がいてわざわざ法を犯すことはしない。よって内定辞退を促すことが考えられる。内定者自身が自主的に辞退するならば法律違反にならないからだ(内定者を不安にさせる、内定辞退書への捺印を迫るなど)。

大切なことはまず、企業からの申し出をその場で絶対に同意してはいけないことだ。「親や大学に相談します」と述べて、保留にしよう。次に、必ず周囲の人や専用の窓口に相談すること。親や大学(キャリアセンター)はもちろん、国や都道府県の専門窓口に相談しよう。そして最後に、企業と交渉して自らの将来のために有意な選択肢も作り出そう(関連会社への就職斡旋や、入社時期や初任給など雇用条件の調整など)。決して泣き寝入りをしてはならない。最高の選択肢を選ぶ努力をすることが大切なのだ。

(相談窓口)
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