特別養護老人ホーム介護職に一部医療的ケアを解禁へ
本来、介護施設とは介護を提供する場であり、医療的ケアを提供する場ではありません。一方、近年病状が安定し、積極的な治療が必要でない患者は、病院から退院を求められることが増えています。このため、特別養護老人ホームなどの介護施設では、病状は安定しているものの一定の医療行為が必要な高齢者の受け皿にならざるを得ない現状があります。介護施設での受け入れを求められることが多いのは、胃ろう(栄養剤を胃につないだチューブから入れること)や痰の吸引(喉などに溜まった痰を吸引器で吸引すること)、じょくそう(床ずれ)の処置、在宅酸素の管理などが必要な高齢者。これらの処置は医療職から指導された家族でも担えますが、あくまでも医療行為であり、介護職が行うことは法的に認められていません。
看護師の人数を増やしたり、夜間も看護師が常駐するなどの体制を整えて、こうした医療行為が必要な高齢者を受け入れている施設もあります。しかし、介護報酬上の配慮はないため、実質、看護師の人件費は施設の持ち出しになります。このため、そうした体制を取れる施設はごくわずか。多くの施設では、現状の職員体制で対応できる限られた人数だけを受け入れています。
それでも夜間など看護師のいない時間帯には、違法と知りつつ、やむを得ず介護職が医療行為を担うケースもあります。こうした実態をふまえ、2009年2月、厚生労働省は検討会を招集。特別養護老人ホームでの「胃ろう」「たんの吸引」について、一部を医療行為ではなく「医療的ケア」と言い換え、研修を実施した上で介護職に認めるための議論を始めました。
介護職の間では、「介護職に認めると行っている医療的ケアの範囲では現状追認に過ぎず、改めて容認する意味がない。認めるなら、もっと広い範囲まで認めるべきだ」という声がある一方、「医療的ケアは担いたくない」という声も多いのが現状です。
この件については、これからも引き続き検討が進められる予定です。