批判を浴びた要介護認定の項目・基準の変更
2009年2月、このテキストが発表になると、介護関係者は認定調査基準の大幅な変更に驚いた |
同時に、項目それぞれの判断基準も大きく変更されました。これについては検討会での議論は行われず、一部の有識者により非公開で検討。新しい認定調査がスタートする2ヶ月ほど前に、「認定調査員テキスト」の発表により明らかになったため、大きな問題に。
これまでは、認定調査員が利用者の状態を見たり、家族や介護職員から話を聞いたりして総合的に判断していたものを、認定調査の時に見たままの状態から判断することに統一、これにより、ふだんは全くできていないことも、たまたまそのときできれば「できる」と判断されることになります。これでは実態とは異なる調査結果になる、もっといえば、多くの場合、要介護度が軽く判定されるおそれがあると、厳しい批判の声が上がりました。
多くの批判を浴びて、厚生労働省はさらに認定基準等を修正。それでも利用者団体等からの厳しい批判は止まず、ついには利用者が新しい認定結果に納得できない場合は、一定期間それまでの要介護度でサービスを受けられるという異例の通達(経過措置)を出しました。新しい要介護認定が始まってから出されたこの通達により、要介護認定を行っている各市町村は大混乱。事務作業量が激増し、不満の声が上がりました。
厚生労働省はまた、新しい要介護認定を4月にスタートするや、すぐにこの認定基準変更が適正かどうかを検証する会合を招集。新認定のデータの検証作業を行い、2009年10月から74項目中43項目の判断基準を変更し、ほぼ元に近い形に戻すことが決まりました。
雇い止めで失業した派遣労働者などが介護業界へ
2008年9月、アメリカの大手金融会社が破綻。「リーマン・ショック」と言われるこの大規模倒産を引き金として起こった不況により、日本も急激に景気が悪化。アメリカへの輸出に頼る自動車産業を中心に、派遣労働者の雇い止め、いわゆる「派遣切り」によって、仕事も住まいも失う人が急増しました。企業業績が急激に落ち込んだため、求人市場は急速に縮小。ハローワークでは、1件の求人に100人もの応募があるというようなケースも見られ、職を失った元工場労働者が介護業界に職を求めることがふえました。そのため、慢性的に続いていた介護業界の求人難は、一時に比べるとかなり緩和されました。
介護業界に転職してはみたものの、「自分には向いていない」「こんな仕事だとは思わなかった」など、短期間で退職してしまうケースも数多くありました。短期間での退職者が続いた施設・事業者の中には、有資格者のみ、経験者のみなど、応募要件を引き上げるところも出てきています。この点については、「介護業界の転職事情」で詳しく紹介します。