人手不足の業界だからと安易に考えないで
介護業界はこれをチャンスと捉え、他業界からの人材を積極的に受け入れ始めました。日本医療事務センター等の一部大手介護事業者では、無資格、未経験者を募集。自社のホームヘルパー養成研修等を活用し、採用後に教育して各事業所に配属しています。当初、未経験者の受け入れには消極的だった現場も、試験的に受け入れたところ期待以上の活躍が見られ、今では積極的に受け入れるようになったとのこと。中堅・中小事業者でも他業界からの人材採用が増えており、求職者の多い一部の地方では介護分野の実務経験者ですら、応募しても「求人は充足した」と採用を見送られるケースも出ています。
しかし一方で、他業界から実務経験のない無資格者を受け入れたものの、「きつい」「思っていた仕事と違う」「自分には向いていない」等の理由で、短期間で退職してしまったというケースも少なくありません。このため、職員数に余裕のない中堅・中小事業者には、未経験者の採用は事業者の負担や離職リスクが大きいからと、採用に慎重になっているところもあります。このため、未経験での求職者からは、「介護業界は人手不足だと言うが、20社以上受けたのに受からない」という声も聞きます。
介護業界としても、いくら人手不足とはいえ、採用できれば誰でもいいわけではありません。なかなか採用に至らない人の中には、人手不足の業界だからと甘く考え、志望動機や提供したい介護等についての考えがまとまらないまま面接を受けている人も見られます。
介護は、コミュニケーション能力をはじめ、臨機応変な対応ができる柔軟性、現状から起こりうるリスク等を見通す洞察力など、様々な能力が求められる仕事です。そうした点についての自分自身の適性や能力を十分考慮した上で、求職活動を行う必要があるでしょう。
長年売り手市場が続いていたケアマネジャーの求職環境について言えば、ここ数年で様変わりしています。2006(平成18)年4月、担当件数がオーバーすると介護報酬が極端に減額されるという介護報酬改定(逓減制)により、居宅介護支援事業所の経営は一気に悪化。事業所の統廃合が急速に進行して求人は激減しました。
2009(平成21)年4月の介護報酬改定では逓減制は緩和されましたが、逆に1人のケアマネジャーが担当件数をオーバーしても経営に大きな影響が出なくなったため、あえて新規採用をしようという事業所は増えていません。このため、ケアマネジャーは一時の超売り手市場から買い手市場に変わり、給与水準も下がっています。これからケアマネジャーの資格取得を考えているかたや転職を考えているかたは、求人動向に注意が必要です。
ハローワークや求人サイトの上手な利用を
今後、どのようなテンポで景気が回復し求人状況が変わっていくか、まだ先の見通しは立ちません。介護業界の求職環境の展開についても、現時点での予測は困難です。しかし多くの事業者、特に中堅・中小事業者では、本音を言えば有資格で実務経験のある「即戦力」を採用したいもの。教育・研修に、時間も手間もかける余裕があまりないからです。そう考えると、介護業界で求職活動を行うのであれば、少なくとも130時間の研修を受講すれば取得できる「ホームヘルパー2級」の資格を持っていた方が望ましいことは間違いありません。
さらに言えば、自宅近くなどの特別養護老人ホーム、有料老人ホーム等の高齢者施設でボランティアを経験するとよいと思います。未経験であったとしても、高齢者介護の実態をある程度見聞きし、体験した上で求職活動に臨めば、志望動機等も説得力が増すはずです。
東京・池袋のハローワークなどには、介護・福祉関係専門の求人コーナーがあるので、ぜひ活用して |
また、介護求人ナビ、カイゴジョブなどの介護専門求人サイトや、アドバイザーが転職相談から仕事紹介、面接、給与の交渉までしてくれる「あいけあ」などの登録制の介護の仕事紹介もぜひ上手に利用してください。