今後ますます拡大する介護業界
介護保険のスタートにより、急拡大した介護業界。現在の介護業界の業界規模は5兆8743億円と言われています※1。コムスンの撤退後、業界地図はどのように変わったのでしょうか。業界売り上げ1位は、医療事務サービス大手のニチイ学館(ヘルスケア部門の売上高797億円)。撤退したコムスンから、それまで手がけていなかった認知症グループホームや有料老人ホームなどの施設サービスを継承。2位のメデカ・ジャパン(売上高320億円)を大きく引き離し、圧倒的なトップを維持しています。臨床検査事業からスタートしたメデカ・ジャパンは、介護保険制度開始以前の1997年に宮城県で24時間訪問介護事業を受託し、介護事業に参入。現在は、訪問介護や通所介護などの在宅サービスのほか、有料老人ホームなども手がけています。
3位は、売上高300億円のツクイ。訪問介護、通所介護などの在宅介護サービス、有料老人ホームのほか、介護人材派遣なども手がけています。4位は、コムスンから12県で在宅サービスを引き継いだセントケアホールディングス(売上高169億円)。5位は、同じく13都道県で在宅サービスを受け継いだジャパンケアサービス(売上高129億円)となっています。
今後、介護業界はどのように展開していくでしょうか。要介護認定者数は、2000年に256万2000人だったものが、2007年には452万9000人と約1.8倍にまで増えています※2。これからも要介護高齢者の数は増え続け、2015年には568万6000人、2025年には702万人にまで増えるという推計もあります※3。
介護保険の給付の状況を見ても、2000年には3兆5157億円だった保険給付額が、2008年には7兆494億円にまで増えています。2008年の給付額は2007年より4.3%増加※4。給付対象の変更などがない限り、このペースが急激にダウンする材料は今のところありません。
そう考えると、高齢社会の進展と共に介護業界の市場規模が拡大していくのはほぼ間違いありません。人手不足、低待遇など問題は抱えているものの、やはり非常に将来性のある業界だと言えるでしょう。
※1 「2009年度業界地図最新ダイジェスト」(一橋総合研究所・監修/高橋書店発行)より。各企業の売上高も同誌のデータによる
※2 厚生労働省・平成19年度介護保険事業状況報告(年報)より
※3 40~64歳までの2号被保険者を含まない65歳以上の要介護高齢者数推計。エイジング総合研究センターによる「認知症・要介護高齢者将来推計」より
※4 国民健康保険団体連合会取扱分のみ。国民健康保険団体中央会の「介護給付費の状況」平成12年度「年間分」及び「介護費等の動向」(平成20年度分)より