介護業界のスタートは介護保険制度開始から

今でこそ当たり前のように使われている「介護」という言葉。実は、1980年代に「介助」と「看護」を組み合わせて新しく作られた言葉だと知っていましたか? つまり「介護」とは、わずか30年ほど前に生み出された概念であり、仕事なのです。

介護的な仕事
生活に困った高齢者を受け入れていた「養老院」では介護も提供されていた
もちろん、「介護的な仕事」はそれよりずっと以前からありました。明治時代後半から大正時代にかけてあちこちで開設された「養老院」。生活が困難な高齢者を受け入れて養護するこの施設では、「介護的な仕事」が提供されていました。一方、現在の訪問介護の前身に当たる「家庭養護婦派遣制度」は、1956年に長野県で先駆的にスタート。この在宅福祉サービスは、1960年代にかけて大都市部でも提供されるようになっていきました。

1963年に「老人福祉法」が制定されると、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホームなどが整備されていきます。また、長野県で始まった在宅福祉サービスは「家庭奉仕員派遣事業」として高齢者福祉施策に位置づけられるようになりました。

このころようやく「介護業界」と言えるものができつつあったのかもしれません。しかしこうした介護のサービスは、あくまでも「措置」という行政処分の枠の中で限定的に行われていたに過ぎません。民間企業の参入はごく一部しか認められず、サービスを提供していたのは社会福祉法人が中心。利益を追求する姿勢はほとんどなく、市場原理が働かない、狭く、非常に特異な業界でした。

それが大きく変わったのは、2000年の介護保険制度の開始から。民間企業による介護サービスの提供が全面的に認められ、介護業界の規模は一気に拡大。介護業界には「利益追求」「効率化」「サービス業」というそれまであまりなかった考え方が持ち込まれます。

これにより、あまり顧みられることがなかった無駄が省かれ、「世話をしてあげている」という意識などが見直されていきます。しかし一方では、行き過ぎた効率化、利益追求が批判され、不正を繰り返したコムスンが介護業界からの退場を余儀なくされるという事件も起こりました(コムスン事件については「介護業界の動向」をご覧ください)。

介護保険制度開始後の民間企業の参入により、介護業界はこうした経緯を経て、ようやく狭く特異な業界から、他業界と同じ土俵で比較できる業界へと成長できたと言えます。

介護保険導入で増えた介護の職場

介護保険制度の開始により、介護の職場も広がりました。施設サービスは、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の3つ。在宅サービスは、居宅介護支援、訪問介護、訪問入浴、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護 (ショートステイ) 、有料老人ホームなどのほか、市町村単位で運営する小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護、認知症対応型生活介護(認知症グループホーム)などがあります。それぞれを簡単に紹介してみましょう。

施設サービス

●特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
要介護の高齢者が人生の最後まで暮らす生活の場。食事、入浴、排泄などの介助をします。

●介護老人保健施設 
もともとは、要介護の高齢者に機能訓練を行い、自宅への復帰を促す入所施設。最近は特別養護老人ホームへの入所待ちの場になりつつあります。

●介護療養型医療施設 
病状が安定しているものの、医療的なケアが必要な要介護の高齢者の入所施設。食事、入浴、排泄などを介助します。2011年度末には全面廃止予定。