つらかった睡眠不足、うれしかった学位取得
---9年間という長い社会人学生生活でしたが、つらかったことは何ですか?まずなんといっても「眠かった!」です。いつも睡眠不足でした。またやりたいことがたくさんあったので、時間が足りなかったですね。学業と仕事だけで、遊べなかったのが残念でした。
---では逆にうれしかったことは?
卒業、修了時に学位を授与されたときは感無量でした。また投稿論文が受理された時もうれしかったです。研究の仕方、モノの考え方を学ぶことができたこと、また英語力が上がったことも成果です。よい担当教授と上司に恵まれたこと、協力してくれた同僚にも感謝しています。
---ちなみに何か「進学してみて意外だったこと」はありますか?
う~ん……。社会人学生はよく勉強しています。他方、高卒後すぐに進学してきたクラスメートには勉強以外にキャンパスライフを楽しむ方も多かったと思います。高度な知識・経験などをお持ちの先生方も多くいらっしゃいますので、多くを吸収するチャンスをぜひ、利用するのがお得と思います。
あと教授には様々な方がいて、色々な意味で多様性が存在する場と感じました。自分にとって良いと感じる先生から多くを学ぶことをお勧めします。私はとても素晴らしい教授の下で研究生活をおくることができました。
工業高校卒、博士号取得の経験を活かし、進学希望者の支援をしたい
---さて、今後はツルさんの経験をどのように活かしていこうと考えていますか?はい。まず技術者としては世の中にいいものを提供して、同時に技術を極めていきたいです。また、僕自身の経験を「進学したい人」たちの支援に役立てたいと考えています。
僕は工業高校の出身なんですが、「工業高校生は卒業後の可能性が閉ざされているとネガティブに考える人が多いんです。
自身もそうでしたから(笑)
でも、工業高校出身でも可能性がある、って知らせたい。夢、希望を与える種を一緒に撒きたいです。そのため、講演や執筆などしたいと思っています。
ツルさん(仮名)の社会人学生歴9年間を記録したホームページ「社会人学生経験談」
ええ。自身の学部(夜間主)・修士・博士の9年間の大学生活と会社員生活の経験が、これから進学を検討されている方のお役にたてれば、思ったんです。
研究室の選び方や国際・国内会議の対応方法などの情報も提供していきたいです。まあ忘れっぽいので、今のうちに記録しておこう、という理由もあるのですが。
---最後に読者へのメッセージをお願いします。
大学進学だけが全ての解決策になるとは思いません。あくまでもたくさんの選択肢のうちの1つです。もし自分が目指す道を実現するために進学が必要な場合には、したい時に進学すればいいと思います。
「時間がない」という発言を耳にすることがありますが、時間は工夫次第で作る事ができます。もし大学進学が必要、と判断したのであれば、時間がないという理由で進学をあきらめるのはもったいない!
いつでもやりたくなったらやりたいことに挑戦してみてください。挑戦すればきっとそこに近づけるはず。夢は大きく、現実は少しずつ。
少しでも多くの方が、自己実現に向けて希望を叶えられることを願っています。
そのひとつのモデルケースになれれば幸いです(決して良いモデルの域に達していませんが)。
---ありがとうございました。今日はお会いできてうれしかったです。
こちらこそありがとうございました。
あとがき~取材を終えて(西島)~
今から10年前、新宿の大学フェアで初めてお会いした時は、まだ社会人入試を受験する前で不安そうに見えました。一般入試突破後、社会人学生生活9年を経た今、学業だけでなく職場でも認められ、成長がまぶしいくらいです。経済的な事情で大学進学を一度はあきらめたものの、社会人になり自身の力で進学を成し遂げたツルさん、この課程こそが成長につながったのでしょうね。
しかし「博士号だけでは当然食べてはいけない」と言い、今は陸上無線技術士という国家資格合格を目指し、勉強を続けているそうです。博士号と組み合わせて技術の向上を目指すというツルさんの向上心は、衰える事がありません。「生涯、学習」という考え方にどっぷりとはまり、生涯を通じてのステップアップを目指しています。