夜逃げ1回、転職9回
矢野さんは、大学を卒業して奥さんの実家の魚の養殖業を継いだ。36人従業員がいると言われたが1人しかいない。専務待遇だったが全くの素人でうまくいくはずがない。26歳で現在の1億円くらいの借金を背負って家族で東京に夜逃げした。その後百科事典の会社に入るが、全く売れず脱落。次にちり紙交換の仕事に就く。これはヒットし、そのエリアでは売上NO.1になった。★【ポイント】売上トップのコツは、住宅街ではなく、オフィス街を攻めたこと。階段の踊り場に積まれた書類の束を喜びながら運んだそうだ。誰もが敬遠する場所を体力と根性でかっさらうところは、一つ学ぶべきポイントと思う。
そこである日、ふいに上京してきたお兄さんに会う事になった。お兄さんは夜逃げで大迷惑をかけた人。一生会うことも無いと思ったが、ちり紙交換で貯めた50万円を胸に面会した。当然罵声を浴びせられると思った矢野さんだが、お兄さんはこういった。「元気でよかった。あの失敗のことは気にするな」 矢野さんは泣きながら50万円を返そうとしたが、お兄さんは受け取らなかった。でも矢野さんは50万円を押し付けてその場を去ったのだった。
★【ポイント】ここで矢野さんは「50万返さず新しいトラックを買えばよかった」と一瞬後悔するのだが、やはりここで借金を一部でも返したことで、心の負荷から開放されて良かったと説明してくれている。私たち日常生活でも、学ぶべきお話だ。失敗から逃げるか、失敗を認めるのかの差である。
その後広島に戻って、義理のお兄さんのボーリング場などを手伝うのだが、楽して働くのにはどうも性に合わない。そこで公民館で物売りしている人に弟子入りし、トラック1台で移動販売を始めた。最初は全然儲からない。同級生が来たら、恥ずかしくて逃げた。子供にも「お父さんの仕事って何?」と聞かれて、うまく説明できずに辛かった。ある日、お客さんに「安物買いの銭失い」なんて言われたから、いい品を入れようと仕入れ値を上げた。利益は薄くなるけど、その分たくさん売って、仕入原価を下げてもらえばいい。
★【ポイント】ダイソーは「安かろう・悪かろう」の商品を集めて100円で売っているのではない。また仕入れ値を買い叩いているわけでもない。単純に言えば、70円で仕入れるにはいくつ買えばいいんだ?という仕入をしているのだ。毎日売上8億の会社だからこそできる荒業である。後発の同業種はたくさんあるけど、この論理で考えると品揃えではダイソーに勝てるわけは無い。
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