<処方箋「会社を探すことを辞めて、メンターを探す」
「賢明で信頼できる相談者」のことを、専門用語で「メンター」と呼びます。語源はギリシャの詩人ホメロスが書いた叙述詩『オデュッセイア』の登場人物・メントール。彼はオデュッセウス王の僚友であり、王の息子テレマコスの教育を託された賢者で、テレコマスにとって「良き指導者・良き理解者・良き支援者」。
つまりメンターとは、
- 成功体験を伴う役割モデルをベースにした的確な指導ができ、
- 目標であり信頼の対象である
さて今みなさんに、メンターはいますか? もしくは昔「ああ、あの人は私にとってメンターだったな」と思う人はいませんか?
私には大学生時代は数人しかいないけど、社会人時代にはいっぱいいるなあ。
旅行会社の人事課時代は、ロサンゼルスで働いている先輩かな。販売促進課時代は企画部の部長だった。今の会社に転職する時にもたくさんいたし、今のキャリア発達のファシリテーターをやろうと考えるに至るにも、たくさんの人の助言があった。
ほら、何をするにも「根拠」が欲しいじゃないですか。私の場合なら、
「ああ、今転職するべきなんだろうか?」
「この会社に進むべきなんだろうか?」
「この仕事は嫌だ。どうしたらいい?」
「ああ、もう会社辞めたいよ。もう少し我慢した方がいいのかな?」
って悩んでいる時(つまり、トランジション)に、当然明確な根拠が無ければ単なる勘で道を選んでしまい、失敗しちゃっただろう。それを防いでくれたのがメンター。私に限ってもほとんどそうだったし、神戸大学院・金井壽宏教授も「霧で希望が見えなくなった人は(希望の欠如の深刻さに応じて)結構重症かもしれないから絶対に相談相手を探したほうがいい」と語っている。(出典『働くひとのためのキャリア・デザイン』)
「躊躇している時に背中を押してくれる人」
「暴走しようとしている時にブレーキを踏んでくれる人」
トランジションの時期にメンターの存在は不可欠。
よって、メンター探しが今のみなさんにとっても、必要なのです。
※『オデュッセイア』では、女神アテナが幾度となくこのメントールの姿借りてオデュッセウス父子を導いている。語源を辿るとメンターとは神のお告げの代弁者なのだ。深い言葉である。
※メンターから指導やアドバイス、支援を受けることを、メンタリングといいます。
※次のページで処方箋「メンターを探す」の効果を考察する。