派遣で働く/派遣の基礎知識

就業先が変わると有給休暇はどうなるの?

派遣契約を終了して、また派遣で新しい仕事を始める場合、残った有給休暇はどうなるのでしょうか。有給休暇を残したままにしておくためのポイントをお話しします。

執筆者:林 紀子

派遣社員で働いていても、有給休暇は付与されます。その有給休暇が残ったままの状態で、契約を終了して違う仕事を探すことになった場合は、どうなってしまうのでしょうか。今回は有給休暇の付与に関する基礎知識と、残った休暇の持ち越しについて見てみましょう。
 
有給休暇
派遣契約終了時点で有給休暇が残っている時、条件がそろえば持ち越すことができます

有給休暇はいつからもらえる?

まず、有給休暇について見てみましょう。派遣で働き始めてすぐは、有給休暇が取得できません。では、いつから有給休暇を取ることができるのでしょうか

一般的なフルタイムの就業の場合、8割以上休むことなく勤務していれば、6か月間継続的に勤務した後、最低10日間の有給休暇が付与されます。その後、継続勤務期間によって11日間、12日間と増えていき、6年以上の継続勤務で20日間与えられます。有給休暇は本来、労働者の心身のリフレッシュのために付与される休日です。どんなスタイルで働く場合でも、リフレッシュは必要ですよね。
 

有給休暇、しっかり取れてる?

有給休暇は労働者の権利です。ところが、みなさんも経験上感じたことがあるかもしれませんが、実際は派遣先によって有給休暇の取りやすさは異なってきます。いくつか事例をご紹介します。

■比較的有給休暇が取りやすいAさん
メーカーで営業事務として勤務中のAさん。派遣先の企業では、女性社員が月1回程度は有給休暇を必ずとる風潮で、男性社員、女性社員ともに有給を取ることに全く抵抗がない様子。Aさんも、周りから有給を取るように勧められるなど、有給の申請が非常にしやすい環境にありました。Aさんは残存の有給休暇が12日間のため、夏休み分と病気になった時に休むことを考えながら、2か月に1回程度の有給を申請して、時々3連休を増やしてリフレッシュし、付与される有給休暇の9割以上を利用しています。

■有給休暇が取りにくいBさん
金融機関に金融事務として勤務中のBさん。派遣先企業では、男性、女性ともに冠婚葬祭と夏休み以外は有給を取る雰囲気ではありません。Bさんの有給残日数は16日間ありましたが、遠方の結婚式に出席するために1日、夏休みのために土日と合わせて3日間有給休暇を取得する程度。ほとんど使うことがない状況です。時々、休みたいと思うこともありますが、一日休むと仕事上迷惑がかかってしまうため思うように休みはとれず、有給休暇の消化はなかなか難しいようです。そのため、年間付与日数のうち3割程度しか利用できていません。

■普段の有給休暇が取りにくいが、長期休暇が取りやすいCさん
サービス会社の一般事務として勤務中のCさん。派遣先の企業では、通常時はなかなか有給を取ることができませんが、夏季休暇は14日間前後と比較的長期間取得する風潮でした。Cさんの有給休暇は20日間あったため、業務に差し支えのない程度に長期休暇を取得しゆっくりリフレッシュすることができています。年間付与日数のうち、8割程度は利用できています。

このように派遣先企業の風潮によって、有給休暇の実際の利用状況は大きく左右されてしまいます。AさんやCさんのようにある程度有給休暇を利用することができればよいのですが、Bさんのように、有給の取得が難しく残日数が多い状態で、派遣契約を終了することになった場合、有給休暇はどうなるのでしょうか。
 

有給休暇の消化はできるの?

正社員の場合、退職時に多くの人が有給消化してから辞めていますよね。有給消化とは、例えば10月末日で仕事を辞める場合、有給が10日間残っていたら、会社には在籍していますが最後の10日間は出勤はせず、有給扱いにしてお給料だけ支払われている状態のことを言います。

派遣社員の場合、契約更新をこちらからお断りする自己都合で仕事を終了する時は、有給消化が認められないいケースが多いです。ただし、派遣先から人員削減のために契約更新を打ち切られた場合、ある程度の有給を消化したり、派遣社員側が契約を更新をしたくないにもかかわらず、あと少しだけ更新してほしいと頼まれた場合に、1ヶ月更新とし前半の10日間だけ勤務して、残りは有給消化の形をとるケースは聞いたことがあります。

そのような場合は別として、Bさんのように有給消化ができずに残ってしまった分はどうなるのでしょうか。
 

有給休暇を消滅させないためのポイント

有給休暇は、一定の条件がそろえばそのまま持ち越すことができます。そのためのポイントは次の2つです。

ポイント1:同じ派遣会社から仕事を紹介してもらう
同じ派遣会社の紹介で新しい仕事を始める場合は、有給休暇が付与された状態のままです。ところが、別の派遣会社の紹介で新しい仕事を始める場合は前の派遣会社で付与されていた有給級休暇は消滅してしまうため、有給休暇がない状態からのスタートになります。有給残日数が多い場合は同じ派遣会社から希望の仕事が紹介された方が、新しい仕事を始めてすぐにでも有給休暇が取得できるため有利です。

ところで、この有給休暇のお給料はどこから支払われているのでしょうか。派遣先企業から派遣会社に支払われる時給と派遣社員に支払われる時給には差がありますが、これは派遣社員の有給休暇時のお給料や保険料、派遣会社の運営費用等を差し引いているためです。つまり、派遣会社があらかじめ有給休暇分を見越して差し引いた金額を、派遣社員に支払っているということです。一生懸命仕事をしてきたのだから、有給休暇分のお給料もできるだけしっかりと頂きたいですよね。

ポイント2:次の仕事は1ヶ月以内にスタートする
注意したいのが、同じ派遣会社の紹介で新しい仕事に就業する場合でも、仕事のスタートまでに間が空いてしまうと、有給が消滅してしまうということです。その期間は派遣会社により定めが異なりますが、ある派遣会社は先の派遣契約終了時から次の派遣契約開始時までに、1ヶ月間以上空いてしまうと有給休暇が消滅すると定めています。仕事を変わる時には、派遣会社の担当者にいつまでに新しい仕事を始めると有給が消滅しないかを確認すると確実です。

派遣での就業先が変わる時には、健康保険などと合わせて有給休暇にも気を留めて、損をしない派遣ライフを送りたいですね。

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