シンクタンクの研究員という仕事柄、マスコミの方とお会いする機会があります。先日、ある記者と、「派遣に比べて有期雇用全体の問題は記事になりにくい」という話になりました。派遣で働く人は雇用者の約2%。非正規雇用で働く人はその10倍以上。そして、派遣の問題の多くは非正規雇用全体に共通する問題でもあるのにです。

あらためて1度、派遣制度の何が問題になっているのか整理してみます。

「限られた働き方」から「ふつうの働き方」に

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派遣で働く人のすそ野が広がった。

1987年に派遣法が施行された時、派遣で働けるのはわずか13の職種でした。結婚を機に正社員をやめた女性が、語学や貿易実務などの専門性をいかして復職する。時給も相応に高い「限られた働き方」でした。

1999年に転換点が訪れます。派遣法の改正によって、当時26職種に限定されていた派遣の仕事が、ほとんどすべての職種で可能に。安全上の懸念から1999年には認められなかった製造業の生産ラインへの派遣も、少し遅れて2004年には認められます。

1999年と2004年の法改正によって、派遣の仕事範囲は拡大し、派遣で働く人も右肩上がりに増加。引越しなどの軽作業も、一般事務も、仕事の守備範囲を厳密に線引きできない自由化業務も、派遣で働くことができるようになりました。

実は、この時期は雇用情勢が悪化した時期と重なっています。企業の倒産、リストラが相次ぎ、企業は固定人件費をおさえるために非正規化を選択。正社員就職や転職ができずに、フリーターや派遣になる人が数多く生まれました。

それまでは、専門性の高い家計補助的な女性の働き方であった派遣。しかし1999年以降は、正社員経験のないまま新卒が派遣で働き始めたり、男性の世帯主が製造業派遣で働いたりと、派遣は誰もが選択しうるふつうの働き方として、すそ野が拡大していったのです。

「派遣」はいい制度?悪い制度?

2000年に入り、正規・非正規の格差やワーキングプアという貧困問題に、社会の高い関心が向けられるようになりました。同時期に、「偽装請負」「派遣会社の不当搾取」「派遣切り」「派遣村」などが発生。

2008年の「年越し派遣村」には、派遣以外の方も相当数いたのですが、派遣という冠がついたことで、派遣制度そのものに強烈なマイナスイメージがついてしまいました。ネットカフェ難民も、決して全員がというよりも大半は派遣ではありません。日雇い派遣労働者が取り上げられたことで、派遣制度と貧困問題が同一視されていきます。

現在の派遣制度には、「不安定雇用」「質の悪い働き方」という否定的な意見と、「多様な働き方」「雇用創出」という積極的に評価する意見の両方が存在します。1987年に派遣という働き方が認められて以来ずっと、統一的な見解は出ていません。

わたしはこれまでに数多くの文献を読んできましたが、どちらかが絶対的に正しいというよりは、現在の派遣制度には両方の側面があると考えています。派遣制度が初期に想定していた、家計補助的であったり、他に優先したいことがある人にとっては使いやすいメリットのある制度ですが、1999年以降に増えた、本来派遣で働きたかったわけではない人にとっては、マイナス面もあります。

派遣は「ふつうの働き方」になってきたが、派遣で働く人々を守るしくみはほとんど進化してこなかった。これが現状ではないでしょうか。

まずは有期雇用全体に共通する問題点から。