ホームページの「賞味期限」は?
会計や税務の世界には「原則」のほかに「例外」もついてくるもの。「原則」を知ったら「例外」も確認するようにすれば、より深くスキルアップをすることができるでしょう。 |
「ホームページの作成費用」は「広告宣伝費」として、公開したときに一度に経費にして良い」というのが前のページでの結論でした。
これらの費用は、会社の情報を写真や映像、あるいはインパクトのある言葉や音楽に置き換えてアピールする「CMやポスター」と同様、会社の情報を世間に対してインターネットの言語に置き換えてアピールするのと同じだからです。
しかしながら、いくら「広告宣伝費」となるからといって、何でも無造作に経費にして良いか、と言えばそうではありません。いくつか「例外」がありますので、こちらも注意してください。
■ホームページは「公開」して初めて経費と出来る
ホームページの作成をしている途中で決算を迎えてしまった場合、それまでにかかった費用は「広告宣伝費」としてよいかと言えば、これは違います。
広告宣伝費は世間に会社の情報をアピールするための費用。作成途中ではまだ世間にアピールできていませんから広告宣伝費とは言えません。
ですから、ホームページ完成前に決算を迎えた場合には、それまでに支出した費用は「前払費用」などの資産として経理処理する必要があります。
その後、ホームページが完成しアップした時点で「広告宣伝費」として費用計上することになります。
■明らかに「1年を超えてつかうもの」は「長期前払費用」で処理する
ホームページが公開時に一度に経費として良いという理由は「広告宣伝の性格を持つから」というものの他に、実はまだあったりします。
それは「1年を超えて更新しないホームページは、どうでしょう?」ということ。1年以上ほったらかしのホームページは、正直ほとんど「広告宣伝」の役には立たないのではないでしょうか。
つまり、ホームページはある程度頻繁に更新をするから「広告宣伝」の役に立つのであり、更新しないホームページは1年経たないうちにその「賞味期限」が切れてしまうのが普通だから、一度に経費にして構わない、という理由もあるのです。
しかしながら、何らかの方法により1年を超えて利用することを前提としたホームページの使い方もあるかもしれません。そのような場合は、一度に「広告宣伝費」として処理するのではなく、一度「長期前払費用」等の勘定科目を使って資産計上し、その利用可能な期間にわたって毎期均等に経費としていくことが必要とされています。
ちなみに「利用可能な期間」は、通常の資産の「耐用年数」のように一律に法律で決められているものではありませんので、自分の会社で見積もる必要があります。
■ホームページで通販も始めたら?
「ネット販売でもうけちゃうぞー!」といっても、その取扱いには要注意。「広告宣伝以外」の部分は、その取扱いが異なってきますよ! |
ホームページを開いてある程度経つと考えるもの。それは「通信販売」ではないでしょうか。ホームページで直接注文を受けて、商売してしまおう!というものです。せっかくみんなが見ているのだから、ビジネスチャンスを逃す手はないと考えるのは、自然な発想でしょう。
そうすると、今までのホームページに、商品の受注システムや在庫管理システム等を組み込むことが必要となって来ます。これら通信販売の為に必要な支出はもはや「単なる広告宣伝」の範疇をこえて、「インターネットの世界で商売をする」という「本業」の色が濃くなってきます。
通常、ホームページ以外で商品を販売するにあたって使用する受注システムや在庫管理システムは、その額が10万円以上となる場合、「ソフトウェア」として計上し、減価償却で少しずつ費用としているはずです。
ですから、ホームページで通販をする場合も通常の商売と同様、そのシステムの為に支出した費用で10万円以上のものは「ソフトウェア」として取り扱うこととなります。
その他、システムで検索するようなデータベースをホームページに組み込む場合等、「単に会社の情報をインターネット言語に置き換えるための費用」以外の費用で10万円以上のものは「ソフトウェア」として処理する必要がありますので、注意が必要です。
「ホームページの作成」と「ホームページ上の通販」の開発を同時に行う場合、これらの費用をきちんと区分して業者から請求書をもらうようにすれば、経理処理も明確にできることでしょう。