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年利12%の外貨定期、おススメですよ!?(2ページ目)

経理の仕事をしていると、銀行から融資や定期預金など、商品のお誘いもあることでしょう。もし「年利12%の外貨定期がありますが」と誘われたら、どうしますか?実はあなたの「数字のセンス」を問われているのです!

執筆者:森 康博

「利息=元本×利率×(預入)期間」

きちんと見よう
分からない金融商品はちゃんと確かめること。分からなければ、どんどん売主に聞いていいのです。

利息の計算をする場合の計算式を思い出してみましょう。「利息=元本×利率×(預入)期間」ですよね。簿記の勉強をなさっているとき、このような式を見かけなかったでしょうか?あるいは、簿記をやっていない人でも知っている方は多いはず。そう、今の検討には「期間」の概念が無かったのです。
言われると「あー!」とか「はいはい」とか言いたくなってしまう「"キホン"がすぐに頭に浮かぶかどうか」それこそが「センス」なのです。

さて話は戻って、担当者が置いていったパンフレットを見ると、「1ヶ月定期」と書いてあります。利率は「年利」つまり、1年間で12%となっていますから、今回の場合、利息は100万円×12%×1/12で、なんと1万円しかもらえないのです。つまり、「実質利率1%」ということ。これでは当初の目論見とだいぶ違いますね。

この様子だと「ちょっと、これ、おかしくない?」なんて疑念がどんどん沸いてきます。そこで、パンフレットをよく見てみると……

「税率」「手数料」「相場変動リスク」そのうえ……


預金の利息は「もうけ」ですから、もちろん税金の対象となり、利息の20%が税金となります。つまり、手に出来る利息は8千円となります。

また、外貨の場合、通常「為替手数料」が発生します。国内の取引先のみを相手にしている会社は、通常「日本円」しか持っていないでしょう。「外貨預金」をする場合は、まず「円を売って外貨を買う」ことをしなければなりません。この手数料が1米ドルあたり1円程度かかります。
そして、定期が満期になって日本円に戻す場合、それは「外貨を売って円を買う」という取引になりますので、この場合も手数料がかかり、おなじく1米ドルあたりおよそ1円がかかります。
つまり、往復1米ドルあたり2円の手数料がかかるのです。仮に1ドル100円のときに100万円をこの定期にした場合、1万ドルの扱いですから、なんと購入と売却の合計で2万円の手数料がかかることになります。
都合、手取りはマイナス1万2千円ということになってしまいますね……。
(※ ただし、手数料は外貨の種類や銀行により違いますので、実際の場合は確認が必要です)

さらに、為替相場は日々変動していますので、解約時の相場によって、もちろん「為替差益」が生じる場合もありますが「為替差損」が生じる場合もあります。
1ヵ月後とはいえ、為替相場がどう動くかハッキリと見通せる人はいないのではないでしょうか。

そしてそして、外貨預金は「預金保険」の対象ではありません。金融機関が破綻してしまったら、それまで、ということです。

実務があなたのセンスを磨く!

スキルアーップ!
一所懸命に勉強したことが実務と結びつくことで、自分だけの「真のスキル」になっていきます!

どうやら、今回のこの商品は利息より手数料が多くなってしまい、儲けるとしたら為替差益しかなさそう。でも、為替差損もおきてしまうかもしれない、そんな商品だったようです。
もちろん、外貨預金にもリスクの分散など良い面もありますが、「お付き合い」で買うにはちょっとリスクが大きいかもしれませんね。
その辺の理由と共に社長に進言すれば、きっと社長にも良く理解してもらえるでしょうし、あとは会社の判断、ということになるでしょう。

「リスク」に気づくことが出来たかどうかはのポイントは、今回の場合「利息の計算期間」に気づくことが出来たかどうかでした。
通常「年利12%!」って言われてしまうと、社長のように「やったー!12万ゲット!」と思ってしまってもおかしくないですよね。でも、そこを冷静にキホンに戻って試算してみたから「リスク」に気づくことが出来たのです。

「経理のセンス」のモトは、実は利息の計算式でもお分かりのように、「キホン」の中に隠れています。そして、実務ではその「キホン」を活かす機会が度々現れます。そのときに、「キホン」を思い出し実務と結びつけることにより、それが自分の中で「経理のセンス」として財産になっていくのです。

何気ない日常業務の中にセンスを磨くチャンスはたくさんあります。是非「キホン」を活かすチャンスを逃さないようにしてくださいね。

【関連リンク】
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