一般事務で働く・転職する/一般事務の仕事

事務員さんは見た!『あたりまえの結果は…』の巻(2ページ目)

メルマガで不定期に掲載している、実話を元にしたフィクション「事務員さんは見た!」。第3弾をお届けします。普段気づかないくらい地味だけどジツは責任重大な仕事とは…息抜きにどうぞ!…息抜きにどうぞ!

執筆者:平井 実穂子

「それ、私が出しておきましょうか?」

え?
この女性(ひと)、私知らない。

「切手も貼ってあるし、出すだけですよね?」

とっさに言葉が出なかった私に、彼女はそう続けた。親切で言ってくれてるんだ。
待つのは嫌だし、そういう風に言って貰えて嬉しくなかったわけじゃない。
だけど…。

毎日遠回りして、郵便物をポストに入れる。誰にでもできる簡単なこと。
だけど、請求書も、見積書も、社長の会合の出席ハガキも、届かなかったら大変だ。
会社の誰も、郵便物が投函されないなんてことがあるなんて、思ってもいない。
オフィスの決められた場所に、置いていくだけのそれを、届けるのは私の仕事だ。
仕事なのだから、郵便物がポストに消えるまで、責任を持って自分がやらなきゃいけないんじゃないだろうか?

瞬間、そんなことを考えた自分に、少し驚いた。

「ポストに入らなかったんですね」
そんな事までわかってる。
「ええ。失敗しました。口の大きいポストに行けばよかった」
「でも、ここからじゃ遠いですよね」
ポストの場所も知ってる。なんだか可笑しかった。この近くで、同じような仕事してる。きっと同じような目に、彼女も会ってる。だからわかるんだ。

見れば、彼女は、料金別納の封筒がぎっしり入った紙袋を足元に置いていた。
私が彼女にかわってあげることは出来ない。

封筒の中身は商品。確実に届かないと困る。ポストに入れるまでは、私に責任があるだろう。
だけど、私を見て、どういう状況にあるのか読みとって、自分が出来ること(多分自分がして欲しいと思ったことがあること)をためらわず言ってくれた彼女に、ありがとうと言いたい。
もしも、彼女に預けることで、これが届かないようなことがあれば、その責任を取ったっていい、そう思った。

「ありがとうございます。では、お願いします」
封筒を渡すと、彼女はにっこり笑って言った。
「はい。お疲れ様でした」



それから数日後、取引先から受領書が届いた。彼女に頼んだ郵便で送った商品のものだ。
先方に届いてないなんて事は、少しも思っていなかったけど、やっぱり気になって待っていた。
嬉しかった。初めて、自分の仕事の結果を、確認できた気がした。

毎日大量の郵便物をポストに入れる、同じくらいたくさんの郵便物が届く。
そんなあたりまえの結果は、あたりまえのことをきちんとやってる人がいるから出るものなんだと、ちょっとオオゲサだけど、そう思った。

(「一般事務」メールマガジン54.55号「コラム」を加筆)
※このおはなしは、実話を元にしたフィクションです



事務員さんは見た!『電話応対の極意?』の巻
シリーズ第一弾。ベテラン電話交換手のスーパースキルとは!?
「事務員さんは見た!」第2弾 『脅威の記憶力』の巻
シリーズ第二弾。脅威の記憶力が培われた、ちょっと悲しい理由とは!?
息抜きにどうぞ!


定形外,冊子小包,ゆうぱっくなどの料金をひとまとめ 配送料金表(ネットオークション/ガイド記事)
郵便物の料金調べに便利!


ヒミツ?のメールマガジン…読んでみて下さいね

「一般事務」メールマガジンは、事務のお仕事に役立つ話題を中心に、毎週月曜日にお届けしています。
…ですが、現役事務担当者ならではの、ライヴな話題、ナイショのお話もお届けしたくて、バックナンバーは掲載しておりません。
不親切でごめんなさい。でも、購読も解除もメールアドレスを入力するだけでとてもカンタンです。よろしかったらぜひ読んでみて下さいね。
お申し込みはどうぞこちらから!

【編集部おすすめの購入サイト】
楽天市場で転職関連の書籍を見るAmazon で転職関連の書籍を見る
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます