退職後の健康保険、任意継続か国民健康保険へ加入するかどちらかを選択
健康保険の任意継続は保険料が高い!? 国民健康保険と比較してどっちがお得になる?
普通の会社勤めをしている間は会社が加入する協会けんぽ又は健康保険組合にそのまま加入することになりますが、問題は退職後、無職や学生などになって、健康保険に加入できない場合です。この場合の退職は、通常の離職はもちろん定年も含まれます。この場合、前の会社の健康保険を「任意継続」するか、国民健康保険に入るか、という2つの選択肢があります。
<目次>
健康保険の任意継続とは? 手続き・家族を扶養者にしたい場合
任意継続とは、会社を辞める方が、2年間だけそのまま前職の会社の健康保険に加入できるという制度です。任意継続は退職後20日以内に、選択の手続きを取らなければいけません。この期間を超過してしまうと、自動的に国民健康保険の対象となります。任意継続を選択する場合は、会社員としての資格喪失後、協会けんぽ(健康保険組合に加入していた場合はそれぞれの健康保険組合)に任意継続に加入するための書類を提出することになります。退職した後のことなので、会社を通さずに自ら加入の手続きをするケースが多いです。ご家族を扶養に入れる場合は、任意継続の加入手続きの際に被扶養者の届出書を合わせて提出します。
一方、国民健康保険については、会社を辞めたことを証明する書類(離職票や会社が発行した退職証明書など)を市区町村の窓口に提出して加入手続きを取ります。
任意継続の保険料は高い!? 国民健康保険の保険料を比較!
■任意継続の保険料は在職時のざっと2倍!一番気になるのは保険料かと思います。任意継続の場合、おおざっぱにいうと、保険料は在職時の約2倍になります。会社負担分の保険料も自分で負担する必要があるためです。
とはいえ、任意継続の健康保険料には上限が設けられています。具体的には、多くの方が加入している協会けんぽであれば、(30万円×保険料率)が上限です。例えば退職したときの給料が月給100万円だったとしても、任意継続保険料は30万円をベースに計算されるということです。
健康保険料率は都道府県で多少の上下はありますが、おおよそ10%程度なので、協会けんぽであれば、3万円程度が毎月の任意継続保険料の上限目安となります(ただし、健康保険組合によっては上限を独自に設定している場合があるので、それぞれの健康保険組合に確認してください)。
原則この金額は加入期間中据え置かれます。任意継続の途中で40歳となった方は介護保険料が加算されます。医療費の自己負担は3割で、会社員時代と変わりません。
■国民健康保険の保険料は自治体によって異なる
次に国民健康保険の保険料を見てみましょう。国民健康保険料は次の4つの保険料からなっています。大体の自治体は所得割と均等割のみ採用しています。
- 所得割:前年の所得をベースに算定
- 均等割:世帯ごとの加入人数をベースに算定
- 平等割:1世帯ごとに算定
- 資産割:保有する資産をベースに算定
ただし、所得などの個人情報を含むので、電話では教えてもらえないかもしれませんので、その場合は、面倒でも窓口まで行かなければなりません。退職の1週間程度前に役所で確認しておけば、任意継続との選択も余裕をもってできるでしょう。中には、ホームページ上で国民年金保険料を試算できる自治体もあります。お住まいの自治体も作っているかもしれませんので、検索してみるといいでしょう。
最長2年の健康保険の任意継続、2年目に国保に切り替えるはできる?
任意継続には、2年間の期間制限があります。この期間中は再就職しない限り止めることはできません。逆に2年たてば資格喪失して、国民健康保険に移ります。例えば、退職時点では、任意継続の方が安いため任意継続を選択し、2年目は収入の関係で国民健康保険が安くなったから国民健康保険に切り替える、といったことはできません。任意継続は、任意で加入しますが、辞めるのは任意ではないのです。再就職して任意継続の資格を喪失する場合、新たな保険証のコピーとともに、資格喪失の届け出をけんぽ協会または健康保険組合に提出することになります。2年経過により資格喪失する場合は、けんぽ協会または健康保険組合から資格喪失した旨の通知が送られてきますので、特段の手続きは不要です。
ですので、退職後に再就職の予定がなく、むこう1年程度は無収入が見込まれる方(開業準備や学校に通い直すなど)は、退職当初は任意継続の方が安くても、2年目以降を考慮すると、総額では国民健康保険が得だった、ということもあるかもしれません。どちらが得かは最初の保険料だけでは比較できないのです。
任意継続と国民健康保険では保険料以外にも差が
任意継続と国民健康保険では、保険料だけでなく、給付にも多少の差があります。たとえば、出産手当金や傷病手当金については、任意継続の場合、退職前から給付を受けていたものについては、引き続き受給できますが、国民健康保険に切り替えた場合は、受給できなくなります。また、任意継続被保険者は、健康保険に加入しているけど会社員ではないため、従業員の福利厚生の一環として会社が行っていた健康診断などについては、通常受けられなくなります。健康保険組合独自の福利厚生(保養所など)については、健康保険組合に確認してみましょう。
保険料を滞納した場合の取り扱いも異なります。任意継続の場合、保険料を滞納すれば即資格喪失して、国民健康保険の対象となります。一方、国民健康保険の場合は、滞納しても資格喪失にはなりませんが、自治体によっては延滞金がかかる場合があります。いずれにしても滞納しないよう気を付けましょう。
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