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堀田聰子さん・ぜひ介護職同士で語り合って(2ページ目)

シリーズ記事「介護サービスの質の向上」第2弾は堀田聰子さんに経営者、中間管理者、介護職一人ひとり、行政、それぞれの立場で取り組んでいくべき課題について伺った、後編です。

執筆者:宮下 公美子

介護の仕事は実にクリエイティブ

堀田さんは、そもそもあるべき像が描かれないまま、介護保険制度がスタートしたことにも、サービスの質の指標が作れない一因、介護職の社会的評価を論じることができない一因があると指摘します。

「これから多くの人たちが介護家族か利用者になります。ですから若いうちから、自分が望む介護とはどんな介護なのかを考える機会を作っていくことが大切です。そこには小学校、中学校など、学校教育との連動も必要かもしれません。この部分は行政の役割ですね。

介護が必要になったとき、地域でどう暮らしていきたいのか。それを実現するためにはどんなインフラが必要なのか。自分たちが望む介護を実現するには、どこまでを自分で引き受け、家族が担い、地域のボランティアの力を借りて、どこからをプロの介護に委ねるのか。こうしたことを、それぞれがきちんと考える。自助、互助、共助、公助の棲み分けをはっきりさせる議論がベースにないと、介護職の役割や社会的評価について論じるのは難しいと思うんです」

利用者の急増、介護給付費の膨張から、介護保険のサービスは削減傾向が色濃くなっています。しかし、そもそも介護保険でどこまでを担うべきなのかというベースの議論はいまだにされていません。利用者サイドも、この点について考える機会を持たないまま、介護保険制度は10年目を迎えてしまいました。堀田さんは利用者と事業者との対話の中で介護のあるべき姿が見えてくるのではないかと期待を語ります。

「望む介護を実現していくには、今のサービスのライナップでいいのかを検証していく。検証し、サービスのあり方も含めて高めていくプロセスが位置づけられていくことが、質の向上を考えていく上で大事な観点です。かなり長期的な話ですが、それがあってこその現場だと言えます。

そうした対話の中で、あるいは利用者との対話を通して、介護職のみなさんには自分たちが新しいサービスを生んでいけるんだという自信を持ってほしいですね。たとえば小規模多機能型居宅介護や夜間対応型訪問介護。これは、ある地域の利用者と事業者が、今のサービスでは足りないと感じて始めた取り組み、つまり現場の気づきからスタートしたもの。それが何年かを経て制度化されているわけです。本当に効率的で効果的なサービスは現場から生まれてくることについて、もっと自信を持ってほしいですし、もっと可能性をのばしていってほしいですね」

介護の現場はともすれば、制度の中で窒息しそうになり、無力感ばかりが募りがち。しかし、実は新しいサービスを生み出していく力を持っているのだという堀田さんの言葉にはとても勇気づけられます。「介護って、実はとてもクリエイティブ。でもそのクリエイティビティが社会には伝わっていなし、介護職自身も気づいていないのがもったいない」と堀田さん。

みなさん、自分の仕事のクリエイティビティにちゃんと気づいていますか?

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