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介護報酬プラス改定で給与アップは?

平成20年12月26日、社会保障審議会が21年4月からの介護報酬改定案を答申しました。初のプラス改定を処遇向上につなげたいという意図ははたして実現につながるのか。2回に分けて考えます。

執筆者:宮下 公美子

社保審
厚生労働省の広い講堂は熱気で暑いくらいだった。
平成20年12月26日、官庁仕事納めの日、社会保障審議会介護給付費分科会が開かれ、異例の早さで次期介護報酬改定案が答申されました。私もこの日、傍聴に行ったのですが、マスコミはもちろん、一般傍聴席もほぼ満員で熱気ムンムン。ざっと数えても一般傍聴者は150人以上で、以前、傍聴したときとは比べものにならないほどの人数です。今回の改定に対する関心の高さが伺えます。その傍聴者はみな、分厚い資料をめくり、メモを取りながら熱心に分科会でのやりとりに耳を傾けていました。

アップ改定での給与アップは一部のみか

今回の介護報酬改定の目玉は、介護保険導入後初めて「3%アップ」の改定であること。これは早くから報道されており、ご存じのかたも多かったと思います。改定の基本的な考え方として、「介護従事者の人材確保・処遇改善」が一番目に掲げられ、「夜勤など負担の大きな業務への人員確保を評価」「介護従事者の専門性、キャリアを評価」「地域区分ごとの単価設定の見直し」を行うとされています。

しかし具体的に内容を見ると、今回は制度改正を伴わない加算創設による改定。本体部分の報酬はほとんどアップしていないため、加算が取れない事業所は実質、報酬アップはほとんどなしとなります。

地域区分ごとの報酬単価も、特別区と乙地ではアップされましたが、同時に人件費割合の見直しもあったため、人件費割合が60%から45%に変更された通所介護、特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護等は、特別区、特甲地、甲地では、結果として報酬単価が下がることになります。こうしたことから、「介護職の2万円の給与アップ」の実現は、一部事業者に留まりそう。本当に残念です。

また、加算が取れる事業所も、その加算分が給与に回るとは限らないと言われています。平成20年12月に実施した「あなたの一票」でも「待遇改善に使われると思えない」という回答が半数を占めました。この日の分科会では、日本介護福祉士会名誉会長の田中雅子氏から「報酬がアップしても給与に回せるのは1/3程度であり、あとは施設修繕に回すと言われた会員もいる。給与がアップしたかどうか監視するシステムを検討してほしい」という意見も出ました。

これについて厚生労働省は、介護報酬改定による処遇改善も含めた改定結果の検証と、介護報酬改定の基礎資料としている「介護事業経営実態調査」の実施方法等について検討を行う「調査実施委員会(仮称)」を設置するとしています。大森彌分科会長も今回の改定は「たくさん宿題が残っている」と話しており、平成21年度改定の答申と同時に平成24年の改定に向けた検討がスタートするかのような印象を受けました。

残念ですが、今回の報酬アップは待遇改善に、すぐにはつながらないかもしれません。しかし、今回の改定を介護職員の処遇改善につなげたい、つなげなくてはならないという分科会委員、厚生労働省の強い意志は感じました。

その言葉通り、改定後の検証をきちんと行っていただき、しっかり処遇改善を進めてほしいものです。

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