厚生労働省の広い講堂は熱気で暑いくらいだった。 |
アップ改定での給与アップは一部のみか
今回の介護報酬改定の目玉は、介護保険導入後初めて「3%アップ」の改定であること。これは早くから報道されており、ご存じのかたも多かったと思います。改定の基本的な考え方として、「介護従事者の人材確保・処遇改善」が一番目に掲げられ、「夜勤など負担の大きな業務への人員確保を評価」「介護従事者の専門性、キャリアを評価」「地域区分ごとの単価設定の見直し」を行うとされています。しかし具体的に内容を見ると、今回は制度改正を伴わない加算創設による改定。本体部分の報酬はほとんどアップしていないため、加算が取れない事業所は実質、報酬アップはほとんどなしとなります。
地域区分ごとの報酬単価も、特別区と乙地ではアップされましたが、同時に人件費割合の見直しもあったため、人件費割合が60%から45%に変更された通所介護、特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護等は、特別区、特甲地、甲地では、結果として報酬単価が下がることになります。こうしたことから、「介護職の2万円の給与アップ」の実現は、一部事業者に留まりそう。本当に残念です。
また、加算が取れる事業所も、その加算分が給与に回るとは限らないと言われています。平成20年12月に実施した「あなたの一票」でも「待遇改善に使われると思えない」という回答が半数を占めました。この日の分科会では、日本介護福祉士会名誉会長の田中雅子氏から「報酬がアップしても給与に回せるのは1/3程度であり、あとは施設修繕に回すと言われた会員もいる。給与がアップしたかどうか監視するシステムを検討してほしい」という意見も出ました。
これについて厚生労働省は、介護報酬改定による処遇改善も含めた改定結果の検証と、介護報酬改定の基礎資料としている「介護事業経営実態調査」の実施方法等について検討を行う「調査実施委員会(仮称)」を設置するとしています。大森彌分科会長も今回の改定は「たくさん宿題が残っている」と話しており、平成21年度改定の答申と同時に平成24年の改定に向けた検討がスタートするかのような印象を受けました。
残念ですが、今回の報酬アップは待遇改善に、すぐにはつながらないかもしれません。しかし、今回の改定を介護職員の処遇改善につなげたい、つなげなくてはならないという分科会委員、厚生労働省の強い意志は感じました。
その言葉通り、改定後の検証をきちんと行っていただき、しっかり処遇改善を進めてほしいものです。
>>
次ページは、改定のポイントについて