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なぜこの状態でこの介護度?の不満(2ページ目)

ガイド宮下、2007年度1年間だけですが、介護保険認定調査員として認定調査に携わっていました。認定調査に行って、よく言われるのが、「なぜこの状態でこの介護度なのか?」ということ。これについて考えます。

執筆者:宮下 公美子


適切な認定審査ができていない

本来あってはいけないことですが、認定調査員によって、「歩行」「移動」などの項目がどのレベルに該当するかの判断、特記事項の記述にばらつきがあることは否めません。調査が甘めで、要介護度が重く付いたケース。調査が辛めで、要介護度が軽くついたケース。こうした適正でない調査のあと、更新の際に適切な調査が行われた場合、あるいは適正な調査の後に不適切な調査が行われた場合、状態が変わっていないのに要介護度が変わってしまうことも、残念ですが、あると思います。この場合、本人や家族は納得できないのは当然です。調査員は、調査技術を平準化し、誰もが同一の正しい判断、調査ができるよう、もっとレベルアップに努めなくてはいけません。

また、認知症への理解が足りず、適切な調査ができていないケースもあると聞きます。
認知症のかたには、見知らぬ他人が来ると急にしっかりするかたがいます。ふだんは話していても会話が成立しないのに、認定調査での調査員との受け答えには問題がない。あるいは、何を尋ねても「自分でできる」と答える。そんなケースはよくあります。こうしたかたの場合、私がいた自治体では、必ず後でそっと家族やケアマネジャーからふだんの様子を聞き取るよう言われていました。ふだんの様子の聞き取りができないと、正しい要介護度がつかない可能性が大きいからです。

一方、認知のないクリアなかたで、できることをできないと言い、要介護度を重く判定してもらおうとするかたもいます。私は、可能な限り、歩行などは実際に歩いてもらって判断していました。しかし、「歩けない」「立てない」というかたに、無理に立って歩いてもらうことはできません。時には、ケアマネジャーにあとで身体状況について聞いて修正することもありますが、現状の認定調査では、本人が意図的に要介護度を操作しようと思えば、ある程度はできてしまいます。残念ですが……。

介護認定審査会の審査が適切でない

要介護度は、コンピュータの一次判定をもとに、医師の意見書、調査票の特記事項を考慮して、審査会委員が合議し、決定します。介護認定審査会は、医師、看護師、保健師、介護福祉士、社会福祉士など、保健・医療・福祉の専門家、原則5名による合議体です。経歴、職種によって、得意分野が異なりますから、バランスよく審査ができる組み合わせの5人で構成されています。

審査会の審査が適切でない、と書くと、委員にはお叱りを受けると思います。しかしやはり合議体により、介護の手間のとらえ方が不得意、認知症状のとらえ方が不得意などの違いはあります。これもあってはならないことですが、審査会も決して万能ではないと思います。

たとえば、ADL(日常生活動作)は自立だけれど問題行動の多い認知症のかたは、コンピュータの一次判定では要介護度が軽く出てしまうことがあります。こうしたかたの審査が、認知症のとらえ方が不得意な合議体に回ると、特記事項を読んでも問題行動による介護の手間がイメージできず、時には実態にそぐわない、一次判定の軽い介護度のまま要介護度が下りることもあります。そうしたことをなくすため、審査会委員に対する研修も行われています。

>>次のページは【本人や家族の介護度についての理解が適切でない】
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