テーマの深さに思わず心を揺さぶられる
実は、このマンガを読んでみることを勧めてくださったのは、サイトユーザーのかたでした。勧めてくださったメールには、このように書かれていました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(前略)この本を読むと、介護の仕事の本質に触れることができると思います。
この漫画の良いところは、人が目を背けたくなるような現実も、しっかり真正面から捉えているところです。
この本を読めば、我々がなぜ「キツイ・ツライ」仕事を「イキイキと楽しそうに働いている」のかがわかるかもしれません。(後略)
(投稿者/【白うさぎ】さん・男性)
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実際に『ヘルプマン』を読んでみて、まさにその通り、と思いました。
認知症高齢者を在宅介護する家族をテーマにした話では、一人で介護を担う嫁の孤立無援で果てしない介護生活や、嫁が過労で入院したあと、残された家族が初めて介護の現実に直面して大混乱に陥るさまを、排泄物や暴力も含め、逃げずに描いています。介護関係者はともかく、一般読者がここまで激しい表現をよく受け入れるなぁと思うほどです。
この家族は、主人公のヘルプマンと出会うことで、結果として救われていくのですが、その結末は、強いメッセージを込めて描かれています。認知症になったからといって、父親は父親、なぜ犬畜生みたいに扱うのか、と。ただ年老いて、自分が必要とされなくなったという、情けなく、つらい現実が受け入れられなくて夢を見ているだけなのだ、と。そして、父親自身の尊厳を保つために、いい夢を見させてあげてほしい、と。
ヘルプマンが発したこのメッセージにより、家族一人一人の、父親の認知症状に対する受け止め方が受容的になり、次第に父親も穏やかになっていきます。
現実はこううまくはいかないだろう、という気はします。
しかし、現職のみなさんは、こうあってほしいと願いながら仕事に取り組んでいるから、【白うさぎ】さんの言うように、「キツイ・ツライ」仕事なのに「イキイキと楽しそうに働いている」のではないかと思いました。
息子による父親の虐待の話では、真摯な気持ちで取り組む介護が報われないことで親孝行が虐待へと反転する様が描かれ、高齢者の性の話では、性倫理と生きる活力のどちらにより目を向けるかという、性と生の問題を真っ向から描いています。
介護を通り一遍ではなく、人の生きる根幹に関わる深いテーマとして取り上げ、きめ細かく描いているところに、おそらく一般読者も心を揺さぶられているのだと思います。
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