今後、どうなるのか?
コムスンは、同日夜、サービス継続と従業員の雇用継続のため、7月末をめどに、介護事業すべてを同じグッドウィル・グループ傘下の日本シルバーサービスに譲渡することで基本合意したことを発表しました。日本シルバーサービスは有料老人ホーム「桜湯園」の運営会社。昨年7月にグッドウィル・グループ傘下に入り、かなり厳しい経営刷新が進められていました。事業譲渡により、現場職員はそのまま転籍することになるのかもしれません。しかし介護保険法上、今回の指定打ち切りにより、コムスンの役員が日本シルバーサービスに移り、事業運営をすることは許されていません。有料老人ホームの運営会社が、訪問介護を中心とした在宅介護の事業をどのように運営していくのかは、まだ不透明です。
また、7日朝の毎日新聞によると、厚生労働省はこの発表を受けて、「不正に対する説明もないまま、同じグループ内の会社に事業譲渡するのは、脱法的で処分の趣旨に反する」と不快感を示し、「(事業譲渡を認めるかどうかは)コムスンが提出する計画を見てから判断する」ようで、この事業譲渡が認められるかどうか、現時点では未定です。
※7日夜の会見で厚生労働省は、グループ内での事業譲渡の凍結を求めました。また、コムスンの事業譲渡案発表を受けて、和歌山県知事は「認められない」と、譲渡後の指定申請を受理しないことを発表。北海道や愛知県では、申請があれば厳格に審査することを会見で発表しています。(6月7日夜加筆)
※これを受けて、8日、コムスンの樋口社長とグッドウィルグループの折口会長が会見。事業譲渡は凍結すると発表しました。会見の中で、「なぜこのような不正が行われたか」という記者からの質問に、樋口社長は「なぜ行われたのかまったくわからない。監督不行届きだった」と回答していました。
しかし、某局の番組では、コムスンの元社員の「介護事業参入当時から、本社から履歴書が送られてきて『この名前で申請を出せ』という指示があった」という証言もあり、本社ぐるみの非常に悪質な不正という見方が強いようです。
(以上、6月9日加筆)
締め付けだけでは解決しないのでは?
それにしても思い切った処分を下したものです。コムスンはもともと不正の噂が絶えませんでしたし、本社主導の不正など許されることではありません。行き過ぎた利潤追求の姿勢は批判されて当然でしょう。まじめに運営している事業者のためにも、コムスンのような営利だけを目的とした企業には退場していただいた方がいいとも言えます。
しかし一方で、介護報酬は改正のたびに厳しい切り下げが続いており、介護保険制度自体、利潤を追求しにくいボランティアを強いるような仕組みになってきています。介護事業者からは、「利益度外視でやらないと利用者を支えられない」というような話がよく聞かれます。厚生労働省は、そのあたりをきちんと理解しているのだろうか、と思います。
今回の処分を受けて、報道の中では「そもそも福祉は利潤追求できるものではないのに」という発言が聞かれました。たしかに、介護事業で利潤だけを追求するのは間違っていると思います。しかし、民間企業が利潤を追求する存在であるのは事実。介護事業を民間企業に門戸開放しておきながら、いまになって「利潤追求するのが悪い」と批判するのは間違っていないでしょうか(コムスンの弁護ではまったくありません、念のため)。
利潤追求してはいけないのであれば、社会福祉法人とNPOですべての介護を担えるような体制を整えて、介護保険をスタートすれば良かったのです。それが無理だから民間企業に門戸を開いたはず。であれば、行き過ぎた利潤追求が行われないような監視、指導の仕組みとともに、民間企業が正当な商売で妥当な利潤が上げられるだけの仕組みを作るべきではなかったかと思うのです。
厳しい処分は、安易に利潤追求している他社には戒めになったと思います。しかし、締め付けばかりの行政の対応に嫌気がさして撤退する事業者がさらに増えないかが心配です。今の介護報酬のあり方は、企業努力の範囲を超えつつあるように感じます。まっとうに営業している会社が、社員を養えるまっとうな利益を出せるだけの介護報酬設定をしてほしい。本当にそう思います。
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