それでも宮下は賛成できない
私が介護職の医療行為に賛成できない理由は4つあります。●介護職は医療行為についての教育を受けていないため、その行為がもたらす危険性について十分、予測することができず、また、問題が起こったときに適切な対応がとれるとは限らないこと。
●軽微といわれる医療行為と難しい医療行為のボーダーを誰が引くのか、という問題。たとえば普通の爪切りはOK、巻き爪はNGだと言うなら、ヘルパーしか入っていない利用者の場合など、どの程度だと切ってはいけない巻き爪だと、誰がいつ判断するのか。
●失礼ながら、現状では介護職の方の意識、知識、技術にかなりばらつきがあり、一律、軽微な医療行為はやってよいとした場合、現状の教育体制では1つ目にあげた点から、事故の危険性が否定できないこと。
●介護職の本分は介護であって医療行為ではないため、本来、医療行為を担うべき看護師や医師に、介護の現場での医療をどうカバーするべきかをもっと考え、対応してほしいと考えていること。同時に、施設や介護事業者にも、利用者の健康と安全、そして介護職の職域を守るために、適切な対応を検討してほしいこと。
以上のような理由から、Kさんの意見に賛成できないことを、下記のようなメールで伝えました。長くなってしまうので、一部省略しながら紹介します(それでも長いです)。
「 爪切りについて、Kさんのおっしゃっていることは
ごもっともだと思います。
(中略)
しかしだからといって、やっていけない医療行為を介護職が
やってもいい、やるべきだ、という意見には、申し訳ないのですが、
私は賛成できません。
(中略)
看護師も爪切りでけがをさせることはあるかもしれません。
しかし看護師には、けがをした際の適切な対処方法を
勉強してきています。
医者につなぐこともできます。
しかし介護職でそれを自信を持ってできる方が
どれだけいるでしょうか。
服薬管理にしても同じです。
利用者に薬を飲ませて、万一、異変があったとき、
介護職にそれが薬によるものかどうかを判断し、
適切に対処できるでしょうか。
そもそも異変に確実に気づくことができるでしょうか。
看護師が医療行為を行うのは、医療についての知識があり、
医師との連携も取れること、それ以前にそもそも医療行為をになう
医療職としての自覚と責任を持っているからです。
しかし、介護職はそういう教育を受けてきていません。
(中略)
ですから、現状の介護職、ホームヘルパー教育体制の中で、
ほかにやってあげられる人がいないのだからやるしかない、
という考え方で、介護職が医療行為を引き受けていくのは
大変危険だと思います。
(中略)
医療行為についての教育を受けていない介護職が医療行為を担い、
事故が発生してしまったら、不利益を被るのは、
結局、利用者なのです。
だからといって、現状ではそんなきれいごとばかりは
言っていられません。
Kさんのおっしゃるとおり、折り合いをつけて
やっていかなくてはならないと思います。
しかしやっていくにしても、それを仕方がない、と思うのではなく、
何とかして介護職が医療行為を担わずにすむ方法を探っていく姿勢を
持っていただけないものかと思っています。
たとえば週に1回あるいは2週に1回、
ホームに訪問看護を入れることにより(ホーム負担で、
ということになります)、
全員の体調管理と爪切りをやってもらうなど、方法はないでしょうか。
あるいは、どうしても引き受けるのであれば、医師や看護師を
招いての勉強会で、医療行為について一定水準以上の知識と技術を
身につける、など。
(私はこれにも本当は反対ですが。引き受ける前提で対応すれば、
どんどん介護職に医療行為が降ってきますから)
現場の事情をよく承知していない私がこうしたことを書くのは
僭越だということは重々承知しています。
しかし、Kさんのように利用者を思い、前向きに仕事に
取り組んでいる方ほど、医療行為について現状追認でお考えに
なっておられるようなので、あえて長々と返信させていただきました」
これに対して、Kさんからさらにご意見をいただきました。
次のページで紹介します。