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爪切りは医療行為か?

爪切り、服薬管理など、軽微と言われる医療行為も、医師法に照らせば介護職が行うのは違法行為。この問題を、「そんなことを言っていたら介護の現場は成り立たない」というユーザーの方の意見から考えてみます。

執筆者:宮下 公美子

爪切り、服薬管理など、軽微と言われる医療行為も、医師法に照らせば介護職が行うのは違法行為。この問題についてメールマガジンで触れたところ、ユーザーの方から、「杓子定規に『医療行為だからヘルパーにはできません』と言われては、お年寄りの生活は守れない」いうご意見をいただきました。とても大切な問題なので、いただいたご意見を紹介しながら、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

※この記事を掲載した翌年、平成17(2005)年7月に、厚生労働省から「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」という通知が出され、専門的な管理の必要ない爪切りや耳垢の除去、自動測定器による血圧測定などは医行為に該当しないとの見解が示されました。

ですので、記事で提起している問題の前提条件が少し変わってきています。が、今も介護職の医療行為については現場でさまざまな問題が起きています。この問題についてみなさんに考えていただきたく思いますので、このまま記事を掲載しておきます。

きっかけは宮下の病院ボランティアでのできごと

爪切り
爪を切るのは日常行為と言われればそうかもしれないけれど……。
病院の介護ボランティアで爪切りを頼まれたが、医療行為だからと断った。そんな話を2004年12月15日のメールマガジンに書きました。できることだけをやればいい、つまりできないことを断りやすいボランティアの立場でも、頼まれた爪切りを断るのには勇気がいった、現場のみなさんが医療行為を断るのは本当にたいへんだろう、しかしきれいごとかもしれないが、私は介護職は医療行為をしてはいけない、という見解をこれからも訴えていきたいと思っている、という内容でした。

これに対して、ユーザーの方からこんなご意見をいただきました。

 「以前は施設に勤めており、現在はグループホームに勤めている者です。

  確かに、ヘルパーの授業では爪を切る行為は医療行為になると
  教えられます。薬を飲ませる行為もそうですよね。

  では、独居の方の爪は誰が切るのでしょう?
  足の爪どころか、手の爪さえご自分で切られない方が
  たくさんいらっしゃいます。

  薬も管理できずに飲めない方がいらっしゃいます。
  ヘルパー授業では、「口元まで持っていって、あとは自分で
  飲んでいただいて」と教えられました。
  でも、口の中に入れないと飲めない方もいらっしゃいます。

  そのたびに看護師に頼まなければいけないのでしょうか?

  爪を切るとケガをさせるおそれがあるのは、看護師も同じです。
  巻き爪など、素人では困難な場合は医師に頼らざるを得ませんが、
  普通に爪を切る行為まで「医療行為」だとして敬遠されては、
  生活に支障が出てくる方がいらっしゃるのも事実です。

  痰の吸引をボランティアさんにさせるのは問題かもしれませんが、
  ご本人が爪切りを頼んでいらして、それが技術的に困難な爪でない
  のなら、社会通念からしても切って差し上げて問題ないのでは
  ないでしょうか?
  杓子定規に「医療行為だからヘルパーにはできません」と
  言われてしまっては、お年寄りの生活が守られないと思います。

  グループホームにヘルパー実習に来る方で、私たちスタッフが
  爪を切るのを見て、「爪切りは医療行為じゃないのですか?」と
  聞く方がいらっしゃいますが、「それじゃ医者に連れてけって
  いうんかい」と不愉快な気分にさせられます」(Kさん・女性)

本当にその通りだと思います。
メールを読み、Kさんが利用者のためを思い、現実の中でできる限りの対応をしているのが伝わってきました。このご意見に対して私がどのような返信をしたか、次のページで紹介します。
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