介護保険制度は導入から5年がたつ2005年、被保険者の範囲、給付内容、保険料負担のあり方など制度全般についての見直しが行われます。それに向けて、2003年6月から7回にわたり、厚生労働省では社会保険審議会の介護保険部会で識者を集め、見直しについての議論を実施。2004年1月には「介護制度改革本部」を立ち上げ、本格的な改正作業に入りました。
2003年の介護保険部会でどんな議論がされたのか、その議論の内容について、2~3回に分けてわかりやすくまとめてみます。青字で、私なりの意見も添えてあります。
介護保険部会の委員構成
検討を行っていた委員は全部で21名。内訳は、日本在宅介護協会専務理事など業界の直接関係者が5名、大学教授が4名、医師会、看護協会から各1名、知事や全国町村会など自治体関係者が3名、そして呆け老人を抱える家族の会など、比較的利用者に近い立場からは3名。その他、労組、ジャーナリストなどが4名といった構成になっています。
【2003年4月に見直しをした介護報酬について検討していた社会保障審議会介護給付費分科会と同じようなメンバー。現場の生の声を直接訴えていそうなのは、介護給付費分科会にも入っていた「呆け老人を抱える家族の会」の方ぐらい。もちろん、業界関係者の方々も現場の声を伝えるために来ているとは思いますが、意見書を見てもあまり切実さは感じられないのですよ。……というのは、うがった見方でしょうか】
論点・その1【保険料徴収対象の拡大+障害者支援費制度との統合】
これが、今回の介護保険見直しの最大の課題。
介護保険が導入された2000年4月末に2165万人だった第1号被保険者数は、2003年10月末には12%増の2420万人、要介護認定者数は218万人が70%増の371万人に。介護保険の給付費も2000年度3.2兆円(11カ月分)だったのが、2004年度には予算案上では、5.5兆円になります。平成25年度には20兆円にものぼるという試算も出ています。このままでは、保険料はどんどん跳ね上がるし、それでも財政破綻は必至の情勢。
そこで財源確保のために、現在40歳以上とされている第2号被保険者(=一部を除き、介護保険を利用はできないが保険料は徴収される対象者)を、一気に20歳以上にまで引き下げようという案が出てきました。しかし、お金がないから若い人からも取るよ、では、国民の理解は得られません。
そのため、介護保険導入時から検討されていた障害者対象サービス、つまり現行の障害者支援費制度との統合により給付対象を拡大することで、若年層の理解を得ようという案が浮上してきました。これには支援費制度の方もサービス利用が急拡大し、国庫負担が大きくなりすぎて、同じく財政破綻が明らかだという事情があります。