盲導犬にまつわるこぼれ話
今回、この記事作成のために財団法人日本盲導犬協会取材をさせていただいた過程で聞いた、盲導犬にまつわるこぼれ話をいくつか紹介します。訓練士も犬も一生懸命訓練しても、中には訓練途中で盲導犬に向いていないと判断される犬もいる |
盲導犬は、盲導犬の素質を持つ犬(繁殖犬)同士を交配し、盲導犬候補の子犬を計画的に繁殖しています。そうやって誕生した素質のある犬であっても、訓練を行って実際に盲導犬として活躍できるレベルまで達するのは全体の3~4割。盲導犬を育てるのは、実はとても難しいのです。ですから、盲導犬の素質があるかどうかわからない、一般の家庭犬を親に持つ犬を候補犬にすることはほとんどありません。本で紹介された「盲導犬クイール」は家庭犬から生まれた盲導犬。とても珍しいケースだと言えます。
■盲導犬はすべて無償貸与
盲導犬は視覚障害者に対して無償で貸与されています※。これは、盲導犬を金銭で売買あるいは貸与すれば、経済的に恵まれない視覚障害者には盲導犬をパートナーとすることがかなわなくなる、と考えて定めた方針。盲導犬育成のための資金は、そのほとんどが善意の寄付によってまかなわれています。スーパーなどで、緑色の台にちょこんと座るイエローのラブラドール犬の募金箱を見かけたことはありませんか? 圧倒的に不足している盲導犬を1頭でも増やしていくために、街で募金箱を見かけたら、少しずつでも協力したいですね。
※財団法人日本盲導犬協会の場合。そうでない盲導犬育成団体もある。
■なぜ日本は盲導犬が少ない?
盲導犬は、イギリスでは約4000頭、アメリカでは6000頭近くも活躍していると言います。前述の通り、日本ではまだ1000頭前後。なぜこんなに少ないのでしょうか。国内で初めて盲導犬が育成されたのは昭和32(1957)年ですから、70年の歴史を持つイギリスなどと比べると、まだ歴史が浅いからだとも言えます。また日本において、犬は長い間、愛玩犬というより番犬。不審者が近づかないように番をさせるため、家の外の小屋で飼うのが一般的でした。犬をパートナーとして、家の中で一緒に暮らすようになったのは、ここ10年ほどのこと。特に、盲導犬に多いラブラドール・レトリバーのような大型犬を家の中で飼う習慣はなかっただけに、盲導犬が定着するにも時間がかかったようです。
■盲導犬への命令語はなぜ英語?
盲導犬を連れた方を見ていると、「グーッド(good)!」など、犬に英語で声を掛けているのに気がつきます。なぜ英語? と思ったのですが、これは女性言葉、男性言葉、関西弁などの方言に左右されることなく、犬が正しく命令を聞き取れるから。英語と違って日本語だと表現がいろいろですが、英語の「グッド」は誰が言っても「グッド」ですからね。
以上、盲導犬こぼれ話でした。
【写真提供 財団法人日本盲導犬協会】
関連リンク
財団法人日本盲導犬協会財団法人日本盲導犬協会付設盲導犬訓練士学校