【介護職の医療行為をどうとらえるか】
『ホームヘルパーの医療行為』では、施設で母親を亡くした家族、日本ALS協会関係者、元介護職、介護教職者、弁護士、在宅介護事業者、弁護士、新聞記者、ジャーナリストなど17人が、それぞれの立場から、介護職の医療行為の現状、その問題点、改善の方向性などを論じています。
施設で母親を亡くした家族は、入所していた母親が病変し、なぜ死に至ったか、その間の対応を明快に説明しない施設を刑事告発。「人の命を預かる仕事は、人の命を失うことにもつながる。軽い気持ちではいけない」と介護職に警鐘を鳴らしています。
日本ALS協会関係者は、家族の負担を救うためにも早くヘルパーにもたんの吸引を認めてほしいと力説。そんなことをして医療の質が落ちてもいいのか、と迫る看護職に対して、ヘルパーへのたん吸引を認め、在宅療養支援体制を整えないと、人工呼吸器をつけて生き抜く決意をした患者の生命、人生を危うくする、と訴えています。
しかし、一方で元介護職は、介護職が安易に医療行為を行うことの危さを訴え、それを放置している行政担当者の意識の低さ、無責任な対応を批判。「異変にいち早く気づき、専門である医療チームに引き継げる観察のプロでありたい」と望み続けながらかなわず、退職を決意したと言い、「こんなこと(医療行為を行うこと)で、人を助けているボランティア精神の塊と名札をつけている連中は自己満足にしか過ぎない」と厳しい言葉を吐いています。
また、ある訪問介護事業所所長は、利用者の医療行為へのニーズと法律との板挟みになるヘルパーの悩みを紹介。手技や危険性を学べば医療行為はできるかもしれないが、そうすることでヘルパーの仕事領域が限りなく拡大し、ヘルパーとは何かという新しい問題が起きてくるのでは、という現場のヘルパーの声を挙げていました。
立場によって、介護職の医療行為に対する考え方はかなり違ってくるわけですが、これはこの問題が複合的だからだと思います。
→次は【介護職の医療行為問題の解決法は?】