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母子生活支援施設での実習報告(2ページ目)

社会福祉士通信講座を受講中のガイド宮下。受講記第3弾は、母子生活支援施設での実習についての報告です。福祉の職場の方だけでなく、介護職の方も参考になることがきっとあると思うので読んでみてね!

執筆者:宮下 公美子

実習内容は

わずか2週間の実習。さまざまな目標を設定していたのですが、事前のオリエンテーションで、「2週間でこの内容は無理。これは2、3年かけて達成する目標ですよ」と実習担当指導員の方に言われ(苦笑)、指導員の方のアドバイスに従って下方修正しました。一つはどういう利用者がいるか、どのように退所時期を決定するかなど、施設の概況を理解すること。もう一つは、指導員のみなさんが利用者に対して、どのような点に気を付けながら接しているかを学ぶ、といった内容でした。

個人的事情から、9時から5時という時間帯にしていただいたので、実習は子どもたちとの関わりが中心。ちょうど保育園の新入園児慣らし保育※の時期だったので、早く降園した幼児たちや病気で保育園を休んでいる幼児たちの保育が多かったですね。あとは、学童児たちと遊んだり。あいた時間は施設の廊下や学童児が使う集会室、学習室などを掃除したり、母子生活支援施設についての本を借りて読んだりしていました。

そんなので実習になるの? と思う方もいるかもしれません。たしかに幼児の保育は、子育て経験者として、懐かしいなぁ~とひたすら楽しんでいたかも。でも学童児との関わり、そこに一緒に関わる少年指導員の方たちの対応からは、いろいろ気づかされることがとても多かったです。というか、何もかもが初めての経験ですから、見るもの聞くもの、何でも勉強になりました。

たとえば、父親と離れて入所してきた子どもたちは、母親にまで見捨てられたら生きていけない、という思いが心のどこかにある、という指導員の方の話。そのため、母親に嫌われたくなくて不満があっても言えない子もいるそうなのです。言えずにたまったストレスは、友達や指導員など母親以外の人にぶつけて発散する。

さて、そういう子どもに対して、どういう援助をするか。子どもの気持ちに気づいてあげてください、と母親に声をかけるか。子どもから気持ちを聞いて、母親に伝えてあげるか。一番いいのは、自分の気持ちをきちんと母親に伝えられるよう、子どもの背中を押してあげることだ、ということを指導員の方から学びました。

そのためには、母親が子どもの気持ちを受け止められるよう、母親への働きかけも必要でしょう。しかし、母子間に何か問題があっても、両者の間に入って解決するのではなく、当事者が自分で解決できるよう力づけてあげる。それが大切だとは、そういえば本で読んだことはありました。しかし現場で伺ってみて、しみじみ納得したものです。

また、慣れてくるに従って、殴る、蹴ると、暴力的になってきた学童児への対応でのこと。みぞおちを思い切り殴られて痛い思いをしたとき、このまま放っておくのはよくないかなと思って、私はその子に「一緒に楽しく遊びたいから、殴ったり蹴ったりするのはやめてね。今、とても痛かったから、謝ってほしいな」と話しました。かなり抵抗したのですが、最終的には謝ってくれました。

これに対して、ある指導員からは「まずは子どもを受け入れること。叱るのはそれから」と言われて、やはり2週間という限られた時間での実習のため、ちょっと事を急いでしまったかな、と思いました。一方、別の指導員の方からは、「たしかに暴力を振るわれるのはイヤだけど、私は暴力を振るうその子を見たくないから、そういう働きかけをするかな。その子の暴力を止めることで、結果的にその子を守ることにつながると思うし」と言われ、そういう視点はなかったなぁと、はっとさせられましたね。

学童児と接すると、あれこれ考えさせられましたし、指導員の方の母子への接し方を見ていると、なるほどなぁと思うことばかり。そうした一つ一つが私には勉強になりました。私より若い指導員の方も多かったのですが、みなさん、プロだなぁと感じることが多かったです。

※新入園児慣らし保育……新入園児を少しずつ保育園にならしていくために、2時間、4時間など、少しずつ保育時間を伸ばしていくこと。1週間ほどで、通常の保育時間になる。
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