女性の転職/女性の再就職・職場復帰

「死ぬ時は、前のめりで」 石黒不二代さん(3ページ目)

2008年のウーマン・オブ・ザ・イヤー リーダー部門で1位に輝いたネットイヤーグループCEOの石黒不二代さん。お子さんを連れて、スタンフォード大学にMBA留学、その後起業という華麗なるキャリアの持ち主です。

執筆者:川崎 あゆみ

年を重ねることは、下降することではなく
成長していくということ

ガイド:今、30~40代の女性がスポットライトを浴びる時代になってきていますが、石黒さんの中では、年齢を重ねるということについてどんな風にお感じになっていますか? 

年齢を聞かれると、「マドンナと同じ年齢です!」って答えています(笑)。
石黒さん:私は、年齢を重ねてきたという感覚が全くないんです。いまだに「会社に行く」っていうべきところを「学校に行く」って言ってしまうぐらいなので(笑)。でも重ねられてきた経験や知識を受け入れる寛容さは、若い人には必要だと思います。年齢を重ねることって、一年一年成長しているっていうことですから。

肉体的には、下降することは間違いないけど、知識や精神的なことは学べば学ぶほど、蓄積されていくものであって、グラフで言うと右に行くほど下降していくものではなく、むしろ右に行くほど上がっていくものだと思っています。だから、死ぬなら成長しきった段階で死にたい。もちろん、「老い」は、いずれ自分にもやってくる。でも、できれば映画のセリフじゃないけど「前のめりになって死にたい」なと思います。

仕事を辞めることは考えなかった
両方あるのが当然だと思っていた

ガイド:石黒さんは、日本では、仕事と子育ての両立は、難しいとお感じになって、アメリカに行かれたそうですね。子どもがいても安心して働ける環境というのは、最近日本でも、ずいぶん整ってきてはいますが、まだまだだと感じます。

石黒さん:私は、日本の制度の中で子育てしながら仕事をするのは無理だと思って、アメリカに行きました。日本も制度上は、だんだん整ってきているようですが、問題は、その制度があっても、それを利用できる風土があるかどうかですよね。シリコンバレーでは、男の人は仕事を終えたら真っ先に家に帰って行きます。18時前に上司に書類でも出そうものなら、イライラして「うるさい!明日にしてくれよ」みたいな(笑)。それに比べて日本は、仕事が終わってもなかなか帰りにくい雰囲気がありますよね。日本でも、そんな風に帰ったらいいと思うんですが。

ガイド:結局、保育園、学校のことで仕事を早退したり、休んだりするは、ほとんどの場合、女性です。子どものことと仕事を無理なく両立させようとすると、子どもが小さいうちはパート、もう少し大きくなると派遣みたいに働き方を変えざるを得ないという。

石黒さん:子育ては、女性だけではなくて、男性もそれに参加するのが当たり前っていうカルチャーにならないとだめですよね。ワーキングシェアとか性別の壁がなくなるように社会を変えていかないとね。きちんとやれば広まるとは思うんですよ。そういうことから始めていくしかないですよね。

私は、家庭を持つことで、仕事を辞めるとか変えるということは全く考えたことがありませんでした。両方があって当たり前と思っていましたから。家庭を大事にすることも絶対に必要だし、仕事をすることで社会に貢献し続けることも必要だと思います。大変だと思いますけどね。あきらめたくないですね。



石黒さんのご子息とガイドの長女が同じ年齢。お互いの子どもの話で、盛り上がり、「将来は結婚させよう」と本人たち不在の席で、話がまとまりました(笑)。
「年齢を重ねるごとに下降していくのではなくて、成長していくのだ」というお話に、非常に勇気づけられました。石黒さんと自分は、あまりにも違いすぎると思う方も多いと思いますが、働く女性のリーダー的存在である石黒さんの輝きのエッセンスを感じとっていただけたら幸いです。

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