プロフィール
佐藤綾子(さとうあやこ):日本大学芸術学部研究所教授 博士(パフォーマンス学・心理学)
1980年、日本に初めて「日常生活における自己表現」の意味での社会学的言葉として「パフォーマンス」の語を導入。1989年、産学協同体制による日本人の自己表現研究のための「国際パフォーマンス協会」を設立する。著書は、『元気心理学!仕事も恋もうまくいくステキな習慣』(PHP研究所)、『キレない心を育てる-親と子の自己表現37のコツ』(講談社)、『上手な怒り方-がまんしてたらソンばかり』(PHP研究所)など129冊。
第1回は「円滑な人間関係は視覚で作る」
第2回は「キレる上司・部下にどう対処する?」
というテーマでお話を伺っています。こちらもご覧下さい。
時間をかせぐ「10カウント法」
ガイド・泉:佐藤先生とのお話は3回目になりますが、今回もよろしくお願いします。今日のテーマは、「キレる自分にどう対処する?」ということですが…。
佐藤さん:前回、キレる上司や部下にどう対処したらいいかというお話をしましたが、人間関係を円滑にするには、思わずキレてしまう自分にどう対処するかも大切な問題です。
泉:この春、初めて後輩を持つという人もいると思うのですが、社会人としての基本がまだ身についていない後輩に思わずキレる!という人も少なくないかもしれませんね。
佐藤さん:そうですね。では、まず、どうして「思わず」キレてしまうのかを考えてみましょうか。キレるとは怒りの感情であり、怒りは人間の本能に近い脳の働きによるもの。それに対して、考えたり、分析する行為は、後からできた脳の働きによるもの。そして、本能に近い脳は反応が早く、後からできた脳は反応が遅い。
泉:それで、思わずキレるという状態になってしまう…。ある意味、それは仕方がないことなんですね。
佐藤さん:働く脳が違うわけですから、そういうことになりますね。
泉:でも、そうなると、思わずキレるという状態を回避することはできないのでしょうか。
佐藤さん:いえいえ、そんなことはありません。キレそうになったら、考える脳が反応するまでなんとか時間をかせげばいいのです。
泉:時間をかせぐ?
佐藤さん:そうです。私がオススメしているのが、「10(テン)カウント法」というもの。キレそうになったらゆっくり10数えるという方法です。
泉:それだけでいいのですか?
佐藤さん:ええ、それだけでいいんです。10数えている間に考える脳が反応し始めますから、怒りの対象に対して冷静な行動を取れるのです。
泉:思わずキレてしまった後、「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」と落ち込むことがあるのですが、最初に10数えるとそれを防げるということですね。
次のページでは、もう一つの対処法「バルコニー法」について教えていただきます。