「お花のセンスは、勉強したからといって、一朝一夕に磨かれるものではありません。本を読んだり、絵を見たり、いろんな所に出かけることで、ゆっくり身についていくものだと思います」 |
「資格を取りたい」。その気持ちを後押しした母の一言
---でも、その先生からの一言で、試験を受けようかなと思い始めたわけですよね?はい。でもそのフランス国立園芸協会SNHFが発行するDAFA(Diplome D’animation Florale Artistique)という認定試験は、パリでしか受けられなくて、さらに現地に9日間ほど滞在する必要があるんです。子どもを家に置いてまで行く価値があるのか考えました。もし不合格だったら、子どもの学齢を考えると、チャンスは1回だなと思って迷っていました。
受験が現実的になったのは、実家の母の一言があったからです。私が「行ってみようかな」と言ったら、「行ってきなさいよ」と。なんと私がパリに試験を受けにいく間、静岡の実家から留守番をしに来てくれるというんです。母は仕事を持ちながら、子育てと介護をこなしてきた人。子どもを自分でみることができなかったという気持ちからか、私には「子どもが幼稚園ぐらいまでは、自分で子育てするように」とずっと言い続けていたんです。
ですから、私がお花の仕事をしたり、資格を取るために家を留守にするなんてことを言ったら、反対されると思っていたんですが、話してみたらなんと「行けるときに行きなさい」って。夫も事情を話すと「行ってくれば」と言ってくれました。
「今回、不合格だったら、次のチャレンジは、子どもがもう少し大きくなってからと思っていました」 |
とうとう試験を受けに、家族を置いてパリへ!
---パリに行って試験を受けることになったわけですね。試験は、どんなものなのですか?試験の内容は、毎年決まった課題が2種類と、その年によって変わるものが1種類出されます。あとはテーピングしたワイヤーを使ってワイヤリングをする課題の計4種類ですね。制限時間の中でこれらの作品を作って、合計点でフランス人の審査員によって審査されます。
---受験準備は、大変でしたか?
年明けから試験対策用の講習を受けました。子供たちが学校や幼稚園から帰ってくる時間に間に合うように、講習が終ったら急いで家に帰らないといけないわけです。一番苦労したのは、時間との戦いですね。いつも時間に追われていて・・・・・・。だから手が早くなったのかもしれません。
---パリに着いた後、試験までの日は、何をするのですか?
試験前の数日間は、現地のフラワースクールで朝9時から夕方5時まで缶詰め状態で講習を受けます。講習中は、ノートを取って、デジカメと普通のカメラと2台で作品を撮影しました。ときには絵を描いて記録したり。1日中フランス語漬けですし、夜は、げんなりして食事も喉を通らないほど疲れてしまうんです。夜も外で食べる時間もなくて、ホテル部屋でスーパーで買ってきたパンとチーズを食べていました。フランスまで来たのに、この粗食ぶり(笑)。本当に修行のようでした。大変な思いはしましたが、後日、送られてきた結果は「合格」。ようやく人の前に立てる自信がつきました。
晴れて合格証書を手にした川地さん。ついに教える仕事をスタートさせます。次ページへ>>