女性の転職/女性の仕事カタログ

女性がバーを経営? バーテンドレス(2ページ目)

最近、女性が運営をする「バー」が増えてきました。職種名は、男性ならバーテンダー、女性は「バーテンドレス」。今回は、未経験ながら、自ら経営するバーを成功させた女性のお話。

執筆者:三輪 貴子

今でも、店内には、勉強をしたお酒の本がならび、最近購入して勉強をしている最新版の書籍も。

お客さんに売るとなったらプロです ~開店費用と準備期間~

こういう飲食店の店舗って、借りるときは色んな形があるんです。私はリース物件を借りたから、比較的安い資金で始められましたね。冷蔵庫とかは備え付け。その代わり、月々の家賃が高めなんですけど。バーをはじめるとき、お店にあるものは活かしながら、内装を少しアレンジして準備資金は300万円ほどかかりましたね。水道もないところから店作りをする形もあるんですが、これは高い。1人で店をはじめるんなら、リース物件を借りて、もともとの飲食店舗に自分のテイストをちょっと加えて始めるのがいいんじゃないでしょうか。準備期間は、思い立ってから半年でした。その間、お正月などもあったから、実際は4ヶ月ぐらいかな。うちのバーは6坪なんですけど、これぐらいの広さやったら、がんばれば半年あればオープンできると思いますよ。

お酒のことは、バーを始めるまでほとんど知らなかったけど、お客さんに売るとなったらプロですよね。お客さんに尋ねられて答えられなかったら恥ずかしいな、と思って、お酒の本を必死になって読みましたね。活字で頭に入れる知識やったら、努力して読んで覚えれば得ることができるじゃないですか。あとは、味が分からないから、バーへ飲みにいって、普段飲めないようなお酒も、お金を出して自分で飲んでみて、「本に書いてあったのは、こういうことか」と勉強していました。今、うちのバーには、ワインは置いてないんですよ。ワインは、興味がないから覚えられないんですよね。自分がお客さんに語れないお酒は店には置かない。私のこだわりです。

伝票をつけるフリして…… ~集客と努力~

最初はね、1回だけ新聞折込をしたんです。その折込チラシをみて、お客さんは1人しか来なかったんですけど。(笑)このあたりのオフィスで働いている人たちは、いつもバーの前を通ってるから、看板が出てたら観てもらえるし、オープンしたら目新しいから、入ってきてくれる。そして、来てくれたお客さんを逃がさない。(笑) 私の場合、有効な集客方法は、広告を出すよりも口コミでしたね。小さな店ほど、やっぱり口コミなんじゃないかな。とにかく、来てくれるお客さんを大切にしていますね。2回来てくれたら常連さんとして接します。そうしたら「オレの店」って思ってもらえるじゃないですか。すると「オレの店に、誰か連れてきたいな」ってなるから。一度来てくれたお客さんの顔はもちろん、名前も絶対忘れませんよ。はじめのころはね、カウンターの中で、伝票をつけるフリして、お客さんの名前とか、会話の内容についてメモをとってましたね。どんな仕事とか、ゴルフが好きとか。1日が終わったら、そのメモをもう1度見直して完全に覚える。次にそのお客さんがきてくれたら「こないだゴルフ行くっておっしゃっていましたけど、どうでした?」と声をかける。そうすると、お客さん、すごく喜んでくれますから。

うれしかったのは「祝い酒」を飲めたこと ~向いている人・うれしかったこと~

バーをやるなら、お酒は飲めなくてもいいんですけど、人の話を聴いてあげられるっていうのは不可欠かな。みんな話しを聞いてほしくて、来てくれているから。あとは、その人の良いところを探そうと努力できると最高やね。お客さんの良いところを見つけてあげたら、絶対にお客さんも私の良いところを見つけようとしてくれる。その、お互いに優しくなれる感じが、店の優しい雰囲気につながっていると思います。

この仕事に就いて、一番よかったと思ったときはね、お客さんと、祝い酒を飲めたことやね。常連のお客さんで税理士の試験に受かった人がいてね、店が終わるころに報告をしに来てくれたんです。この店に来るまでに、同僚がお祝いに高級な店に連れて行ってくれたそうなんですけど、「最後は絶対にこの店にきて、綾ちゃんにお祝いしてもらわなあかんから。」と言ってくれて。大事な試験に受かったことは一生に一回のことじゃないですか。お酒を出す仕事をしていて、そんな大事な日にお客さんと一緒に「祝い酒」を飲めるなんて、涙が出るほどうれしかったですね。

仕事はなんでも「好き」が一番 ~女性の可能性~

今はね、自分を120%ぐらい生きてるって感じですね。自分の1年1年が、どんどん過ぎていくから、もったいなくて。今34歳なんですけど、あと40歳までの6年間を大事に過ごしていかないと、と思っています。仕事はなんでも、「好き」っていうのが、一番だと思うんですよね。好きやったら、しんどくてもできるし、がんばれる。バーの営業時間は、18:00~24:30ラストオーダー。体も精神的にもしんどいこともあるけど、好きやから楽しめてる。結局、しんどいことと楽しいことを比べたときに、しんどいことの割り合いが、楽しいことに比べて多くなったらあかんね。そうなると、人間、壊れてしまうから。

最後に。私は1回結婚して離婚した経験があるから分かるんやけど、離婚したら、もう、ほんとに途方に暮れるんですよ。安定した将来が全くなくなるし、再婚できるかどうかもわからない。ゼロに戻ったというよりも、マイナスになった感じかな。でもね、どん底まで落ちたから、こうやって、全力でがんばれたのかもしれない。もしかしたら、何か守るものがあったら、できないことかもしれないね。もしも、これからの人生で、やりたいこともないと思っている人がいるなら、30歳を超えても、何があっても可能性は必ずあるから、がんばってほしい。応援しています。

【編集後記】
綾さんにお話を伺うまで、経験なくはじめたバーが順調にいっているのかを疑問に感じていました。ですが、今回お話をお伺いして、あらゆる場面で納得。きちんと自分の柱となる考えを持っていらっしゃること、客観的かつ冷静に自分自身を見つめていること、おおきなポイントはこの2つではないかと思います。ご本人のおっしゃるとおり、女性の私から見ても、本当に「癒し系」の、ステキな女性でした。
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