トライアル(クライアントが仕事を依頼する前に翻訳者の力量をはかるいわばテストのようなもの)に見事、合格!そして晴れてプロデビューした井ノ迫さん。 |
プロの翻訳者としてスタート
川崎:
最初にお仕事を依頼されたときは、どんな気持ちでしたか?
井ノ迫:
嬉しいというよりも、「私でいいの?」っていう感じでしたね。まだ学校に行っている立場なのにいいのかなあと。このトライアルへの応募は、今後、トライアルを受けるのに慣れするために受けてみようと、言わばお試しで応募したものだったんです。
川崎:
やはり、今まで積み上げてきたものがあったから、結果に結びついたんですよね。
井ノ迫:
本当にそうだと思います。でも、クライアントにしたら、すごく不安だったのではないでしょうか。この人、経験も経歴も何もないぞ!みたいなね(笑)。結果的には、仕事内容に、満足していただけたようで良かったです。
川崎:
それをきっかけに仕事の受注が増えていったんですね。仕事は、学校から斡旋というような形でもらうのですか?
井ノ迫:
そうですね、実践の場を与えることにチカラを入れている学校だったので、翻訳者として、学校に登録して、仕事をもらってじょじょに一人立ちをしていく人が多いですね。現在は、その学校からも頂いていますし、他のところにも登録しています。
フリーでやっていくためには、1つ1つの仕事をクライアントが望む以上のクオリティで仕上げていく必要があります。 |
クライアントに満足していただく訳文を作るということ
川崎:トライアル合格から5年。フリーとして、ある程度の実績を積まれてきたわけですが、ご自分のチカラは、もうフリーとしてやっていける!と実感することはありますか?
井ノ迫:
今でも思っていませんね。「私は、いける」っていう風には、全然思っていません。この5年間、ずっと山あり谷ありで。「どこまでできるのかな。本当にいいのかな」と思っています。それでも、実際に仕事をしてみると、文章を誉めてくださる人もいるし、ご指名いただくこともあります。そういうことを繰り返していると、だんだん自信がついてきた気がしますが。
川崎:
ご指名がかかる井ノ迫さんの訳文は、他の人とどこが違うのでしょう。
井ノ迫:
使える言葉を知っているということだと思います。番組に適した、使える言葉を知っているかどうか。自分で言うのもおこがましいのですが、ボキャブラリーがどれくらいあるかとかの違いだと思っています。
川崎:
最初のお仕事以降は、どんなものを手がけていらっしゃいますか?
井ノ迫:
字幕と吹き替えの両方をやっています。比率は7対3で字幕の方が多いでしょうか。内容はCS系のドキュメンタリーやバラエティ番組、DVDの特典映像、映画祭出品作品など年々幅が広くなりまして、最近では他言語のリライトも手掛けるようになりました。
調べ物は、必須。英語力、日本語力とともに翻訳者に必要なのは、リサーチ力とも言われます。 |
仕事の依頼は、どこから?営業もするの?
川崎:全ての仕事は、トライアルを受けてから決まるのですか?
井ノ迫:
必ずしも、全ての仕事をするのにトライアルを受けるというわけではありません。勉強や仕事を通じてできた仲間から「ちょっと手伝ってくれない?」という感じで、依頼されることもありますし、クライアントの方を紹介していただくこともあります。翻訳ソフトを買ったところに担当者の方から、お仕事をいただくこともありますよ。いろんなところで、「(私を)使ってくださいね」みたいに、さりげなくアピールしておくんです。そして、チャンスが来たら、パっとつかむんです。その辺は、フリーランスですから、新しい仕事は、自分で開拓する必要があるんです。
川崎:
今、2,3社に登録しているとのことですが、クライアントによって仕事の内容はばらばらだったりするわけですよね?そうした場合、やはりそのつど専門用語について勉強するわけですよね。
井ノ迫:
そうです。調べ物は、そのつど徹底的にします。家の近くに大規模な図書館があるので、そこを利用しています。いただくお仕事の分野全てに精通しているなんてことは、ありえませんから、とにかく調べものをして、勉強して、その知識を訳文に生かしていくという感じですね。広範囲の知識量においては、夫よりも勝ってると思いますよ(笑)
川崎:
井ノ迫さんの得意分野は?
井ノ迫:
以前から興味があった戦争もののナレーションとか、子どもがいるからアニメは得意ですね。あとは、子育てものとか。ヨットとかサッカーなどのスポーツ系もやりますよ。
プロとしてデビューして5年。次にお仕事の様子をうかがってみましょう。>>次ページへ