2007年夏が不動産市況の「分岐点」となる
私、ガイドはリーマンショックによって、日本の住宅市場は以下の3点の影響を受けると考えています。以下、順番に見ていきましょう。
- 高騰著しかった都心部の地価が下落を始める
- 不動産融資がさらなる規制強化の方向へ進む
- 住宅ローン金利の引き下げ圧力が強まる
2006年秋頃には「ミニバブル」とまで言われたように、東京都心部を中心としたマンション価格の高騰は著しいものがありました。マンション湾岸戦争の最後の聖地とされる「豊洲」(東京都江東区)では新築マンション価格が短期間で1割以上値上がりし、また、新駅開業で脚光を浴びる「武蔵小杉」(神奈川県川崎市)ではマンション乱立による顧客争奪戦が繰り広げられました。その背景には、各デベロッパーが“ここぞ”とばかりに強気の販売に打って出たことが考えられ、マンションブーム(サバイバル合戦)はとどまる気配がありませんでした。
と同時に、上場リート(公募不動産投資信託)や私募ファンドが地価の上昇期待を背景に、都心の高収益不動産を買いあさっていたのも、この時期でした。2005年3月末には15銘柄だった上場リート数が、翌年(06年3月末)には30銘柄へと倍増。東証リート指数が06年秋から“垂直”に近い形で右肩上がりしていることが、こうした加熱ぶりを伺わせます。
しかし、その勢いも2007年5月末まででした。サブプライムローン問題の再燃により、一転、リート指数は下落の道をたどることとなりました。国内外の投資家が売りポジションに転じたからです。
外資主導の「地価回復シナリオ」が終わりを告げる
不動産ファンドが撤退していく様子は、国土交通省が9月18日に公表した基準地価からも読み取れます。2008年、東京圏では平均で住宅地1.6%、商業地4.0%の上昇を示しました。しかし、住宅地・商業地ともに前回より上昇幅は大幅に縮小、その原因について国交省は以下のように説明しています。
- ここ数年大きく上昇した価格水準では取引が成約に至らないなど、需要の減退が鮮明になってきた
- これまでの取引価格等の上昇や最近の景気減速のほか、地価上昇を支えてきた投資ファンド等の市場参加者が投資環境の変化の影響を受けた
リーマンショックによって米国では金融不安が広がり、信用収縮につながっています。母国(=米国)の金融環境、そして、自社の経営状態が不安定な中、日本への不動産投資を継続することは容易でないでしょう。外資主導による「地価回復シナリオ」は終焉(しゅうえん)を迎えることとなりました。日本の地価は下落基調を強めるでしょう。「脱デフレ」までの道のりは、険しさを極めることとなりました。