(記事掲載日/2008.5.14)

いろいろな事件が起こるたびに巻き起こる官僚制批判。しかし、そもそも官僚制とはいったい何なのでしょう。官僚制のなにがよく、何が悪いのでしょう。官僚制理論と官僚制批判理論の基礎的なお話をしていきたいと思います。

1ページ目 【ウェーバーの唱えた合理的官僚制理論】
2ページ目 【代表的な官僚制批判論~マートンの理論】
3ページ目 【シューバートの「公益観」理論と官僚制】


官僚制とは何か?

官僚制
官僚制の構造。官僚制は国家だけでなく、企業などにも存在する。
日本の官僚制をみていく前に、そもそも官僚とは何か、というお話をしていきたいと思います。

官僚制とは、(1)ただ1人で決定する者をトップにし、(2)そこからピラミッド型の構造があり、人が働くしくみだと考えられています。

ですから、それは「古代エジプト王朝以来」あった、といえます。

しかし、官僚制の研究で有名な19世紀末~20世紀初頭のドイツの社会学者、ウェーバーは、官僚制を「家産官僚制」と「近代官僚制」に区分しました。

ウェーバーによると、家産官僚制とは古代から中世、さらには近世の絶対主義国家にみられたものだということですが、日本でいう殿様と家臣の構造も、家産官僚制といっていいでしょう。

家産官僚制は主君と家臣の主従関係によってなりたっており、「不自由な」身分の官吏によって構成されています。つまりある家の家臣の子に生まれたら、いやでも自動的にその家の家臣にならなくてはならないわけです。

また、家産官僚制では公私の区別はないという点も特徴としてあげられます。

それに対し「近代官僚制」では身分制ではなく、契約社会のルールが官僚制を構成しています。官僚は自由な意志に基づいて官僚を選び、契約のうえ官僚になります。また、公私の区別はしっかりしています。

このような「近代官僚制」こそが「純粋かつ合理的な官僚制」であるとウェーバーは考えたのでした。

ウェーバーによる官僚制の特徴

官僚制と政治
ウェーバーが考えた理想的な官僚制と政治の関係。
そしてウェーバーは、12の項目の原則が(近代)官僚制の原則であるとし、官僚制の合理的側面を浮かび上がらせようとしました。

・規則による規律の原則
・明確な権限の原則
・明確な階層性(ヒエラルキー)構造の原則
・経営資材の公私分離原則
・官職占有排除の原則(世襲制の反対)
・文書主義の原則
・任命制の原則(上級者の権限の明確化、ヒエラルキー構造の保守)
・契約制の原則
・資格任用制の原則(世襲などではなく試験などで採用資格者を決定)
・貨幣定額俸給制の原則
・専業性の原則
・規律ある昇任制の原則

たとえば明確な権限の原則によって、組織内の分業体制が明確になり、合理的な仕事の遂行ができる。あるいは文書主義の原則によって、あらゆることが記録・保存され、後の検証が容易になるということがいえるでしょう。

このような原則による組織形態は国家や地方自治体だけにではなく、労働組合や企業などにもよくみられるものです。官僚制が国家に限ったものではないことは、ウェーバーも指摘しています。

そしてウェーバーはこの機械的な官僚制を、(1)結果責任をわきまえ、(2)状況を予見・洞察する能力、(3)指導者たることへの深い情熱、の3つを持つ政治家が指導していくべきだと考えたのです(『職業としての政治』)。

次のページではウェーバーの官僚制視点への批判についてみていくことにします。