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日本の内閣のしくみ(2ページ目)

今回の「基礎からの政治講座」、内閣編の最終回として、日本の内閣のしくみについてお話していきます。内閣の仕事、内閣の権限、内閣総理大臣の権限とは。しっかり覚えておきましょう。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【内閣のメンバーになるには資格が必要】
2ページ目 【内閣全体で行う仕事ってどんなものがある?】
3ページ目 【内閣総理大臣の権限ってどんなものがある?】

【内閣全体で行う仕事ってどんなものがある?】

内閣の仕事1~条約の締結

憲法には内閣の権限としていろいろなものが定められていますが、とりわけ重要なものを解説していきたいと思います。まずは条約の締結。

条約締結権など、外交関係の処理は内閣の専権事項です。もっとも、条約は事前あるいは事後に、国会の承認を経なければなりません。条約は国内法と同じ効力をもつとされているからです。

承認されてはじめて、内閣は条約発効の最終手続である批准(条約を受け入れることを相手国などに通知すること)を行うことができます。

内閣の仕事2~政令の制定

政令
政令の制定は、その根拠となる法律があってはじめて作ることができる。立法国会中心主義のためだ。
政令とは内閣の命令のことです。

ただし単独で政令を制定することは許されません。法律を執行するために必要である場合、あるいは法律によって政令で細則などを決めることを委任された場合に限られます。

ただ近年は、法律によって政令に委任されることがらが多くなっています。このようなことが進むと国会の権限が形だけのものになるおそれがあると指摘されています。

政令には、法律の委任なしで罰則を設けることを禁止しています。裏を返せば、法律の委任があれば政令で罰則を設けることができるということです。

内閣の仕事3~予算の作成と国会への提出

予算を作成し、国会に提出することは内閣に独占されています。

もちろん国会で修正することはできますが、細かく編成された予算について、野党がいくら頑張っても国会で大幅に変えることは大変難しいことです。日本で政権を持つということは、予算の決定権を事実上もつということになるわけです。

予算については、ガイド記事「予算についての基礎知識」もご参照下さい。

内閣の仕事4~天皇の国事行為に対する助言と承認

天皇が行う「国事行為」については、全て内閣の「助言と承認」を必要とします。天皇が勝手に行うことはできません。

そのため、天皇の国事行為についての責任は天皇ではなく内閣が負うことになります。

実際には、天皇がなにかについて「承認」と求めることはまずなく、内閣が天皇に所定の行為をするように「助言」し、それを「承認」するというふうになっています。

内閣の仕事5~裁判官の任命

日本では、裁判官の任命は内閣が行います。ただし、最高裁判所の長官は内閣の指名に基づき天皇が任命します。

また、下級裁判所(最高裁判所以外の裁判所。高等・地方・家庭・簡易)の裁判官は最高裁判所の名簿に基づいて任命します。内閣は指名された人の任命を拒否することはできるが、指名されていない人を任命することはできないとされています。

最高裁判所の任命は内閣がフリーに行えるように憲法上はなっていますが、実際には職業裁判官・弁護士・元検察官・学者などの枠が慣例上決まっていますし、また裁判所法によってさらに細かい条件が定められているので、好き勝手に任命できるものではありません。

内閣の仕事6~臨時国会の召集

国会のうち、通常国会は1月に必ず召集されること、特別国会は解散による衆議院総選挙の後30日以内に召集されることとなっています。

しかし臨時国会は、内閣がその召集を決定することができます。ただし、国会の各議員の4分の1以上の議員が要求すれば、内閣は召集を決定しなくてはなりません。

この決定に基づき、内閣は天皇に助言と承認を行い、天皇が国会を召集します。

内閣の仕事7~衆議院の解散

国会
衆議院の解散は内閣の持つ「伝家の宝刀」といわれるが、かつては解散権をめぐって議論があった。
内閣は衆議院を解散できます。もっとも、日本国憲法制定初期には、「内閣は自由に衆議院を解散できるのか」という議論がありました。

日本国憲法最初の解散は、野党が提出した内閣不信任案を与党も可決し、憲法第69条にもとづいて内閣が解散を決定するというものでした。

日本国憲法第69条
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。


しかし、第2回目の解散からは、憲法第7条三号に基づいた解散が行われています。

日本国憲法第7条
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
1.憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
2.国会を召集すること。
3.衆議院を解散すること。(以下略)


内閣は天皇への助言と承認を与えれば、いつでも解散できるというわけです。これに対してそれはおかしいという訴訟が起こされましたが、最高裁判所は訴えを退けています(苫地米事件)。

内閣の仕事8~議案提出権

内閣は議案を国会に提出できると憲法で規定されています(形式上は内閣総理大臣が代表して提出)。議案には法律案が含まれていると考えられていて、実際に内閣提出の法律案は非常に多くなっています。

実際、2005年の通常国会で提出された議員提出法案は衆参合わせて61件、成立率は21.3%となっていますが、内閣提出法案は91件、成立率は91.2%となっています。

★次ページでは、内閣総理大臣の権限についてお話していきましょう。
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