各国の恐慌への対応
重要なポイントとして、1929年当時はまだ世界協調という概念があまり存在しなかった点があります。まだ電話やインターネットなどの通信手段もあまり発達していなかったので、世界主要国の首脳が協調して対策を取ることが難しい状態でした。第一次大戦後、国際連盟という国際機関も設立されましたが、恐慌においてはあまり存在意味を持っていなかったようです。
アメリカ
恐慌への対応は、各国でかなり違っていました。アメリカは新しく大統領になったルーズベルトが、ニューディール政策という政策によって恐慌を乗り切ります。
それまでのアメリカは、「自由放任主義」の原則の下に、小さな政府、つまり政府が経済活動にはあまり介入しない資本主義で繁栄してきました。ニューディール政策は、それを覆して、政府が経済活動に大きく介入する政策でした。
例えば、ニューディール政策の一環であるTVA(テネシー川流域開発公社)とは、政府がテネシー川流域の開発事情をやる、いわば公共事業です。公共事業によって失われた雇用を創出し、また経済を活性化するのが目的の政策でした。
ニューディール政策によって1930年代半ばには多少恐慌から抜け出せたアメリカですが、本格的な景気回復は第二次大戦後となっています。
イギリス・フランス
イギリスやフランスは広大な植民地を持っていたので、ブロック経済によって恐慌をしのごうとしました。ブロック経済とは、自国と特定の植民地などだけで貿易取引をするタイプの経済政策のことです。それによって、自国に必要な資源を効率よく輸入し、自国の製品を植民地に輸出するなどして、経済運営を効率的に進めることができます。
日本・ドイツ
ファシズムが残した文化について述べた、田之倉稔、共立女子大教授の書籍『ファシズムと文化』 |
日本やドイツはイギリス・フランスなどと比べて植民地保有も少なかったので、ブロック経済で対応することはできませんでした。特にドイツは第一次大戦の敗戦による多額の賠償金支払いもあったため、恐慌によってさらに経済が苦しくなりました。
行き詰ったこれらの国では、ファシズムが台頭します。そして最終的には、周辺国の侵略から第二次世界大戦を始めることになりました。
そして現在の世界は……?
このような状況で恐慌が発生、進行していった1929年の世界ですが、現在・2008年の世界はどのような状況でしょうか?そちらについては、次回に詳しくお話します。【関連記事】
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