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「領事」「亡命」と国際法の関係

中国総領事館亡命事件は世界中の注目を浴びています。この事件の解決を論じるには国際法の知識が欠かせません。なるべくなるべく、カンタンに解説してみました。

執筆者:辻 雅之


(2002.5.18)

1ページ目 【領事って何する人?】
2ページ目 【領事と大使の違いって?】
3ページ目 【「亡命」の国際法的基礎知識】

【領事って何する人?】
外交官だけど、実際には外国にいる《行政官》的な存在


近代はじめころの地中海地方で、貿易のため他国からやってきた商人たちについて、その裁判を現地国ではなく、同じ国から派遣された「領事裁判官」が行う、という制度が生まれました。これが、領事制度のルーツです。

そういえば日本史で「幕末、日本は外国に『領事裁判権』を認めた」ということを習ったこと、思い出した人はいませんか。日本に来た外国人たちの裁判は、幕末から明治初期の間はその国の領事が行っていたのですね。

しかしこの領事裁判という制度は、「国家主権」の考え方が広まるにつれ、じょじょに姿を消していきました。日本などのアジア諸国に対しては、20世紀はじめくらいまでヨーロッパ諸国の領事裁判権が残っていましたが、20世紀中ごろまでにはほぼ撤廃されています。

現在の領事の仕事は「現地国(むずかしい言葉で「接受国」といいます)にいる自国民の保護」のために、「さまざまな《行政サービス》を行う」ことであるといえるでしょう。そのなかには派遣された国との交流を深めること、ビザなどを発給することなんかももちろん含まれています。外国にいる自国民同士の結婚届を受け取ったり、選挙の投票所を設けたりもします。

それから、自国と現地国(接受国)の貿易・通商をさかんにするためのサービス提供も重要な任務ですね。これに関しては自国へ渡るためのビザの発給などが主な業務です。

ちなみに大戦中亡命希望のユダヤ人たちにビザを発給し続け「日本のシンドラー」とよばれる杉原千畝は、リトアニアにいた領事官でした。

というわけで領事っていうのは基本的には「外国にいる自国の《行政官》」みたいな役割を果たしているわけです

 

もっとも、領事は外交官ですから、大使や公使といった外交官と同じように、いくつかの特権が認められています。重大な犯罪でない限り拘禁(逮捕)されない権利(ウィーン領事条約41条1)や、裁判の免除(43条1)、今度の事件で争点となっている公館の不可侵権(立ち入り禁止権)(31条1)などが主な領事特権です。

ちなみにニュースでは「総領事」とか「副領事」とかいう言葉が出てきますが、これは領事の階級。総領事、領事、副領事、領事代理の順です。総領事の次が副領事と
勘違いしちゃいますが、違います。日本は領事代理をおかないので、基本的に副領事は領事のいちばん下の位なのですね。

また、「名誉領事官」という職もあります。現地の人で領事業務を任せられた人のことです。たとえばフィンランドは日本の5都市に名誉領事館を置き、日本人を名誉領事館に任命して領事業務を委託したりしてます。

さて、次ページでは、「領事」と「大使」の違いについて、説明しましょう。
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