「気付き」を与え、「ボールを渡す」、ティーチングの第一歩
相手に気付きを与えて「ボールを渡す」ことで問題意識が芽生える |
日々の生活の中で、自分と他者が物事を捉えている視点は思っている以上に違います。すべての人が自分と同じような視点を持っているとは限りません。だからこそ相手に自分が伝えようとしていることに気付いてもらうことが大切なのです。
例えば、自分の仕事の出来映えに全く問題を感じていない部下にその改善点を指摘しても、そもそも問題があることさえ理解していませんから、まったく的外れな行動を始めるかもしれません。助言を受け入れる状態になっていない人には、いくら話をしても無駄なのです。従って、まずはひと言、「こういう仕事をしてもらいたかったんだよ」「このぐらいまでやってくれると、とても助かったんだけどな」といった形で、問題に目を向けさせるために「気付き」を与えることから、ティーチングは始まります。
上手く「気付き」を与えたら、次は「ボールを渡す」ことです。それも中途半端ではなく、「完全に渡す」ことが大切です。例えば「このお客様への営業活動はお任せするよ。簡単な提案書を作って来週中に一度訪問をし、ニーズを聞いてきてくれないか」といった形で、ある期間内、ある仕事を完全に渡してしまうこと。「もし時間があれば、提案書を書いてみてくれないか」「訪問するので、興味があればついて来ても良いぞ」といった中途半端な態度だと、相手も力が入りません。
ボールを渡す際には、もしかすると「提案書が書けない」「ニーズが聞けなかった」といった具合に、相手がボールを落としてしまう危険性があります。必ずフォローしてあげるという覚悟と、相手に任せても大丈夫だという信頼感を持って完全にボールを渡すことが必要です。
大切なのは、「これは自分がやらなければいけない」と相手に自覚させること。自分の問題だと自覚して初めて、人は問題意識を持って自ら考えるようになります。
ただし実際には、最初のうちは仕事を渡されても一人で出来ない場合がほとんどでしょうから、煮詰まってしまう前にきちんとフォローしてあげることが大切です。フォローのない「丸投げ」は部下を押しつぶすことになりかねませんので十分に注意してティーチングを行ってください。
正しいティーチングの方法で「気付き」を与えることは部下だけではなくあなた自身の成長にもつながるはずです。そうして、組織内の人々の行動に変化を起こすことができれば、仕事の効率は飛躍的に向上し、日々の業務の質を一層高めることができるでしょう。