▲本社風景「空きのペットボトルをパーテーションとして使っている」 |
掲示板で叩かれる
それでも分からないことは、インターネットの掲示板で質問。ところが、掲示板に寄せられたのは、「もっときちんと質問しろ!」「過去のレスを読め!」という冷たい回答ばかり。「それが分からないから質問しているのに」と言いたかったが、掲示板にはコミュニティー特有の雰囲気があり、新参者がおいそれと気軽に質問できる場ではない。「初心者でも気軽に質問できるコミュニティーがあれば―――」。そういう兼元さんの思いがのちに「OKWave」を立ち上げる動機となる。しかしその実現までは、数年という時間を要した。
ただウェブだろうと製品であろうと、コツさえつかめばデザインの基本は同じである。HTMLなど基本的な技術を覚え、見事なウェブデザインを納品すると、口コミだけで仕事が増えるようになった。公園の野外コンセントから電源を引き、夜中ベンチに座って孤独な作業を続け、しばらくすると月30万円ぐらい稼げるようになった。
そのお金でアパートを借りて、ホームレス生活を脱出することもできた。しかし兼元さんは、給与の大半を自らのライフワークにつぎ込み、家庭に生活費を入れず苦しめた妻のために、1万円だけをポケットに入れ1日400円で生活。残りのお金はすべて名古屋の妻のもとに送金した。居場所は知らせず、心配するなと手紙を書いた。