▲『グーグルを超える日 オーケイウェブの挑戦』 |
「社長の人間的魅力にも惹かれました。その会社にはデザインという概念がまったくなく、会社のロゴマークも手作りのようなものでした。会社を大きくしたいから、CI、工場、ユニフォームなどのデザインをゼロからやってほしい、そのために必要な決定権を与えられました」
その決定権が兼元さんにとって、代えがたい魅力に映った。名門デザイン事務所での3年間は、デザイナーとして申し分のない環境だったが、あくまで1人の若手デザイナーに過ぎなかった。せっかく苦心のデザインも、クライアントの意向であえなく却下されることも1度ではなかった。それが若き日の兼元さんにとって、「我慢できないことであり、フラストレーションが溜まっていた」。これまで学んだ手法を、実践する場を求めていたタイミングでの誘いだった。
プライドとの戦い
新たにデザイン室という部署を開設し、室長として迎えられた兼元さんは、意気揚々と出社したが、転職先の社員の目は、予想に反して冷たかった。
「私も若かったんでしょうね。当然受け入れてくれて、拍手喝さいで迎えられると思っていました(笑)。ところが、社員の大半が工場で汗水流しているのに、自分だけ空調の効いた部屋でパソコンに向っている―――。誰も話しかけてくれませんでした」