毎日にサプライズを
いくつかのエピソードを通じて、カネを渡すという単純な所作を、一流のエンターテイメントに仕立てた“角栄流”の根底を探った。そのキーワード「サプライズ(驚き)」は、相手の予想以上のドラマ性を演出し、自分を相手に二度と忘れなくする仕掛けに満ちている。カネには色も香りも付かない、自分の名前を彫りこむわけにもいかない。だが角栄にカネをもらった人間は、未だにその記憶を強烈なイメージとして今なお忘れない。そのサプライズの技を日常生活に応用すると、飽き飽きしていた仕事や生活が大きく変化する。
田中角栄の教訓:スピードで先制攻撃 重い場面こそカジュアルに演出せよ。古い儀式を打ち破り、スピーディーに目的を果たせ。相手に考えるスキを与えず、蝶のように舞い、蜂のように刺せ。そのスピード感で相手を圧倒せよ。 |
例えば、1時間かかっていた定型業務を、30分に短縮してみてはどうだろう。それだけで、そつなく仕事をこなす普通の人が、過激なイノベーターに変身する。
田中角栄の教訓:意表を突く攻撃ターゲット 当たり前の相手に、当たり前のことをしても、人心はワシづかみできない。当たり前ではない相手にこそ、積極果敢に働きかけ、相手に驚きを与えろ。 |
例えば、他部署の後輩の面倒を見てはどうだろうか。後輩は感動して、今までは他部署のいち先輩に過ぎなかったが、それ以降メンター(師匠)に変身するかもしれない。
田中角栄の教訓:物量で圧倒せよ 何事も相場以上を心がけよ。相場同等なら誰も覚えていない、相場以下ならマイナスの印象だけが残る。相場を超えたアクションを起こし相手を驚かせ、自分のイメージを焼き付けろ。 |
例えば、今までコンスタントに営業目標を達成してきたが、集中して今までの1.5倍の結果を出してみよう。一人だけ突出した成果を残した人間として上司の脳裏に焼き付く。
「100本のバラの花束をプレゼントする」のもこのテクニックの1つ。当たり前のことを当たり前にしないのが“角栄流”の真髄だ。
汚いカネもキレイに渡せ
▲『戦後最大の宰相田中角栄』あの田原総一郎氏も角栄の実力を認めた |
しかし、角栄はその汚いカネすら“キレイ”に渡した。恩着せがましいところはなく、あっけらかんと「早く 広く 多く」カネを払った。集金マシーンとして桁違いのカネを集めたが、配分マシーンとしてもカネが渡ることが少なかった無名議員にもカネを出した。嫌味がないから、多くの人に親しまれた。
もし角栄が他のライバルと同じ金額しか持っていなかったとしても、カネを生きガネに変えたのは角栄だったろう。カネに泣き、カネに笑い。政治家としてはめずらしく、実業家としても成功を収めた角栄は、カネ遣いの達人だったからだ。
関連リンク
・「将軍の胃袋」
・「没後5周年特集」
・「田中角栄入門」