『一冊の手帳で夢は必ずかなう』熊谷正寿著
『一冊の手帳で夢は必ずかなう』今年1番実践的だった本 |
なぜ貴重かというと、通常、ビジネス・ノウハウ本は、成功した晩年に書かれることが多い。そのため、読者は著者との世代ギャップを感じてしまいがちだ。しかし、熊谷氏は40代前半の働き盛りの経営者。インターネット関連企業を経営する熊谷氏の発想は斬新だ。
本書のコンセプトは、形のない夢や目標を紙に書き込み、それを何度も見返すことによって、目標達成に向けて自分をコントロールするということ。
理解できる概念だろうが、その実践の姿を当の本人が、そのビジネス半生とともに記述している点が、他の本とリアリティが決定的に違う。「言うは易し行なうは難し」なのだ。
自称「めんどくさがり」という熊谷氏は、改良に改良を加えついに完璧な手帳を完成させた。本著に書かれている「夢・人生ピラミッド」「未来年表」などのノウハウは、熊谷氏が世界中の成功哲学を数年かけて研究した成果物。フランクリン・プランナーなどを愛用している人でも、読みごたえがある内容だと思う。
第一線の経営者が、日々実践する「手帳活用術」や「時間活用術」などが、詳しく書かれており、ビジネスパーソンへの示唆に富んだ一冊だ。
本コーナーに掲載した熊谷氏本人のインタビュー記事も参照してほしい。
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『「ピカソ」のキャリア「ゆでガエル」のキャリア』村山昇著
『「ピカソ」のキャリア「ゆでガエル」のキャリア』今年1番面白かった本 |
今年は「ゆでガエル」という言葉を、至るところで耳にした。
カエルは、突然熱いお湯に入れられると、驚いて飛び出す。だが、常温から徐々に熱くなるお湯の中にいると、その環境の変化に気づかず、やがてゆであがってしまうという。
「ゆでガエル」のキャリアは、周囲の環境変化に鈍感で、何も対策を取らなかったばかりに、結果として不幸なキャリアとなった人のことを指す。
自分ではバリバリ活躍しているつもりでも、実は業務量が多いだけで、時代の流れからズレているケースもある。「ゆでガエル」は他人事だと笑っていられない―――。
一方、1つの成功パターンを「ピカソ」のキャリアと捉えている。それがこの本の面白いところだ。ピカソはあの有名な画家「ハブロ・ピカソ」のこと。「青の時代」「バラの時代」と、次々と画風を変え成功した上に、彫刻などの異分野でも活躍したマルチ・タレントだ。
他にも、ノーベル賞を受賞した田中耕一さんにちなんで、コツコツと1分野を探求する「耕一さん」のキャリアや、綿のようにふわふわと宙をさまようう「タンポポの種」のキャリアを面白く解説している。キャリア関連の本は、無味乾燥な一般論に陥りがちなので、こうして表現力豊かに読み手を引き付ける工夫が大切だ。良薬も苦くては飲みづらい。
興味深いモチーフをうまく生かしながら、今後のキャリアの道筋に対し、光明を与えてくれる一冊だ。