◆築年数が古くても価格が下がらないアメリカの家◆
私はアメリカに住んだことがないので、実際にアメリカに暮らしたことのある知人のSさんご夫妻に話を聞きました。Sさんは、1980年代後半から1990年代にかけて、カリフォルニア州と、ミシガン州に合計7年間住んだことがあるそうです。
Sさん一家がカリフォルニアで暮らしたのは築30年は経っていたという平屋の木造一戸建て。ミシガンでは、築10年程度のテラスハウスに住んでいました。どちらの住宅も賃貸住宅で、築年数はかなりのものですが、とてもよく手入れされており、きれいだったといいます。古い住宅なので設備機器は最新のものではありませんでしたが、全館暖房が付いており、居室だけでなく廊下やトイレも暖かく、快適だったとか。室内や外壁はきれいに塗装されていました。アメリカでは住宅そのものも、機器も、古いものを手入れしながら長く使うというのが基本的な考え方で、日本のようにすぐに古くなったから新しいものに取り替えるということはあまりしないようです。そのうえで、中古だからとか、築年数が古いからといって賃貸料が安くなるということもありません。実際に、カリフォルニア州でもミシガン州でも築20年、30年くらいの家は全然珍しくなく、カリフォルニア州では売りにでていた中古住宅で築50年くらいのものもあったとか。築年数が古いからといって、中古住宅の価格が日本のように大幅に割安になることはなかったそうです。
Sさんがカリフォルニアで暮らしていた家は3LDKだったそうですが、日本の住宅より敷地も延床面積もかなり広く、一番小さい部屋が6畳程度で、子供室は20畳ほどあったといいます。ガレージがあるうえに、家の前に車がラクラク2台は止められ、裏には広い芝生の庭がありました。これで、クラスとしては「中の上」くらい。家賃は当時で15万円前後だったようです。
◆築年数が経過してもできるだけ新築時の状態を維持する◆
Sさんの話によると、アメリカ人は家の手入れをよくするのだそうです。しかも、業者に頼まず、自分ですることが多いのだとか。たとえば、室内の壁紙を張り替えたり、外壁や室内の壁のペンキを塗り替えたりということから、部屋を増築したり、暖炉の周囲にタイルを張ったり、飾り棚をつくったり。中には、ログハウスを自分で建ててしまう人もいるほど。DIYで住まいをグレードアップすることはごく当たり前のことで、郊外にあるホームセンターでは玄関ドアや浴槽などの部材から工具まで、DIYに必要なものはほとんど何でもそろうそうです。
日本では壁紙を張り替えたり、外壁の塗装をするには、業者に頼むことが多いのに対し、アメリカでは自分ですることによって、費用もかなり抑えることができます。また、会社員でも、夕方の4時前後には帰宅する人が多いので、平日でも家に帰ってきてからDIY作業をする時間がもてるという、環境の違いもあると感じました。ですから、単純にアメリカで行われていることをそのまま日本の家に当てはめるのは難しいとは思いますが、共通していえるのは、手入れを怠らず、築年数が経っていてもできるだけ新築時の状態を維持したり、それ以上の状態にすることが大切だということではないでしょうか。
◆買いたい、借りたい家が資産価値の高い家◆
一般論ではありますが、アメリカでは日本に比べて湿気が少ないので、同じように木材を住宅に使用しても腐りにくい環境にあります。シロアリについてもそれほど被害を心配しなくていいようです。また、地域にもよりますが、地震も少ないので、震災によって建物が被害を受ける可能性も低いため、耐震性なども日本で建築するときほど神経質にならなくてよいのかもしれません。そして、多数の中古住宅が活発に流通しているアメリカと日本では中古住宅市場の規模が違いますので、中古住宅に対する評価の仕方だけでなく、選択肢の多さなど、単純に比較できない面があるのは事実です。
しかし、ここで忘れてならないことは中古住宅の価格を高いとか安いとか判断するのは住んでいる人ではなく、他人だということです。この点はアメリカでも日本でも共通していることです。
不動産業者だけでなく、買いたい人が魅力的だと判断すれば、周囲のほかの物件より高額でも手に入れたいと思うでしょう。また、賃貸にした場合でも、ここに住みたいと思う人がたくさんいれば賃貸料を多少高くしても借り手は見つかるはずです。
このように、他人から見て「買いたい」とか、「借りたい」と思える家こそが資産価値の高い家なのです。ですから、そのためには、メンテナンスはもちろんのこと、植栽を施して見栄えをよくしたり、だれにでも長く愛されるデザインを取り入れるということが必要になります。
繰り返しますが、定期的な点検や、リフォームなどは長く暮らすには欠かせないことであり、それが高い資産価値を維持することにつながるのです。私たち日本人もアメリカ人のように、もっともっとわが家に愛情をもって、きちんとメンテナンスをしていく必要がありそうです。
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