◆デザインはシンプルと可変性がキーワード◆
どんなデザインの住宅が長く愛せるのかひとことでいうと、「将来、アレンジが可能なシンプルなもの」ということにつきるのではないでしょうか。
ファッションに置き換えて考えてみると、わかりやすかもしれません。今年だけしか着られないという服も必要かもしれませんが、どんなアイテムにも合わせやすく、重宝する服というのは、意外にシンプルなデザインのものだったりしませんか。基本的には、住宅にも同じようなことが言えるのではないでしょうか。
デザインというのは、最終的にはその人が好きか、嫌いかという好みに落ちてきます。時代の流れによっても、人気の形や色は変わりますし、技術の進歩などにより、素材の品質や種類もどんどん変化していくでしょう。また、住み手の年齢によっても好みは変わっていきます。新築時には若々しい軽快な色使いを望んでも、築年数が経ったら落ち着いた色使いに変えたくなったというように、状況や希望によって好みは変わってくるので、その時々に合わせてアレンジできるのが理想だと思うのです。
アレンジということは色使いだけでなく、家の形つまり、外観全体にもいえることです。というのは、長く暮らしていくうちに家族構成が変化したり、ライフスタイルが変わって、「こうなるともっと暮らしやすいのに」とか、「生活に合わないので不便」という部分がでてきます。そうなったとき、リフォームでそのときの暮らしに合わせて住まいの形を変えていくのが理想です。しかし、リフォームや増築をしたときに、既存部分と新しい部分の調和がとれなくては外観も台なしです。だからこそ、アレンジがしやすいというのは重要なのではないでしょうか。
以前、間取りの可変性について記事に書きましたが、外観のデザインもアレンジできること、つまり可変性が許容されたデザインであることが長く愛せる家には必要なのです。
▼関連記事 どこまで考える?「可変性」
▼関連記事 リフォームで取れない壁と柱
◆住宅こそ、モードより定番?◆
こう考えてくると、新築時に細かくつくり込んでしまうのは得策ではないかもしれません。数年後の変化を受け入れられる外観のほうが長い期間を通して「格好のよい家」になるでしょう。また、長く暮らせる家にとっては、骨組みとなる構造が長持ちすることはもちろん、建築後リフォームをしても耐震性などを維持できるかどうかは重要です。
長く暮らせる家として必要なのは、
●住宅の骨組みはあくまでも頑丈
●後で増築したり、リフォームをしたりというアレンジを受け入れるデザイン
であること。
見た目のよさだけでなく、性能を備えたデザインは本当の意味でいいデザインです。人間工学の面からこのデザインになったという製品があるように、住宅も性能を確保するためにこの形になったという、理由のあるデザインを選びたいものです。
さらに、理由のあるデザインは長く愛され、やがて定番となっていきます。ファッションの世界でも、モードの最先端をいくデザインがある一方で、定番として10年、20年にわたってつくり続けられているものがあります。こういう定番のものは、ずっと前からあるものでも決して古くさい感じではありません。
住宅のように耐久性が求められるものこそ、シンプルであり、長く愛せる定番のデザインを選択するべきなのです。具体的には複雑に入り組んだデザインだったり、直線と曲線が入り組んだデザインより、いくつかの箱を組み合わせたくらいのシンプルな外観のほうが、アレンジがしやすいようです。
そして、アレンジの可能性が幅広い住宅はきっと他人の評価も高く、資産価値の高い住宅になるでしょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。