長期優良住宅/長く暮らせる家

将来も快適に暮らすために知っておきたい リフォームで取れない壁と柱

我慢することなく心地よい生活が続くのが長く暮らせる家。そのためにはリフォームも必要ですが、場合によって思いどおりのリフォームができないことも。そうならないために知っておきたいことを説明します。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド



本当の意味で長く暮らせる家とは、そこに住んでいる間、快適でなければだめだと思います。では、この場合の快適とは? 私は、我慢することなく心地よい生活が送れることだと考えます。使いにくいけれど我慢しているとか、寒いけれど我慢しているという家は快適とは言えません。では、10年、20年後になっても我慢することなく、心地よい生活を送るにはどうしたらいいか? そのためには、ある程度のリフォームが必要になってくると思うのです。

しかし、耐久性はあったとしても、住まいの構造などによって、後に思いどおりのリフォームをすることができない家もあるのです。さて、どんな家がリフォームしやすい家なのか? 今回は、長く暮らす家とリフォームについてです。

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◆リフォームしやすい家のキーワードは「バランス」と「計画性」

どんな工法の家であるかとか、どんな構造になっているかということよりも、将来、思いどおりのリフォームができる家かどうかの最初の条件は、
壁や柱がバランスよく配置されていることです。壁の配置のバランスのイメージは下の図を参照してください。既存の状態で壁配置のバランスがあまりによくなければ、リフォームをすすめるにあたって、希望より耐震性の確保を優先しなければならないというケースも考えられます。築10年、20年経って、ライフスタイルが変化したことにより、間取りを変えるリフォームをする場合でも耐震性などの基本性能を確保することはもちろんです。

バランスがよい例
各コーナーに壁があり、縦や横といった同一方向に片寄りがなく壁が配置されています







バランスが悪い例

窓がたくさん設置され壁の少ない面がある一方で、壁の多い面があります。さらに壁のないコーナーがあるのも耐震性を低くしてしまいます

陽当たりや風通しのことばかり考えて、南側は大きな窓ばかりで壁が少なく、反対に北側には小さな部屋が多くて壁が多いという家は、壁の取り方がかたよっていることになります。これでは、今ある壁や柱だけでもバランスが悪く、地震などの外からの力に抵抗できるかどうか心配になってしまいます。ですから、細かく区切られた部屋を大きな空間にするために既存の壁をとったり、柱を取り除くというようなリフォームはおすすめできません。

もうひとつは、
将来の計画性です。できるだけ新築時に将来のリフォームについて計画しておくことをおすすめします。そうすれば、リフォーム後の柱や壁の配置を踏まえた設計をしたり、水まわりの増設や移設ができるように先行配管をするなど、あらかじめ準備しておくことができます。そして、こういった準備は将来リフォームをした場合に、工事期間を短縮したり、工事費用を抑えることにつながります。

将来のリフォームを前提に、壁や柱のバランスを考えた設計になっているかどうかはとても重要です。そうでなければ、新築時に高い性能を備えた住宅でも、リフォームによって、耐震性の低い危険な建物になってしまったり、動線の悪い使いにくい家になってしまうかも。けれども、しっかりとした事前の計画があれば、「いざ、リフォーム!」という時期がきても、安心してリフォームを実行に移すことができるでしょう。

◆むやみに柱や壁は取れない!

木造軸組工法で家を建てたSさんの例をもとに、もう少し説明をしましょう。
4人家族のSさんの家は、築15年。家を建てたとき、長女は高校生、長男は中学生でした。現在は、子供たちはともに独立して、それぞれ別に所帯を構えているそうです。そこで、2階の陽当たりのよい子供室を夫婦の趣味スペースとして活用したいと、リフォームを実行することにしました。

もともとふたつの子供室を区切る間仕切り壁はいずれ取り払って、大きな部屋にするつもりだったSさん。この家の場合は、何も問題もなく、ふた部屋をつなげて大きな空間とし、いまでは奥さまの手芸教室兼ご主人の読書室として活用しています。

この
「つもりだった」というところがポイントなのです。

仮に新築時に、バランスよく壁や柱が配置されているケースでも、簡単に、間仕切り壁や柱を取り除けばいいという考えは危険です。なぜなら、前に説明したように軸組工法なら柱や梁などによって、枠組壁工法なら壁によって、建物を支えているからです。

柱を1本抜くということは、その周囲の別の柱や梁に建物の荷重がかかることになります。もともと、抜こうとしている柱がなくなることを前提として計算された構造であれば、柱がなくなっても問題はありませんが、その位置に柱があることで建物を構成している場合はその柱をなくすことはできません。もし、どうしても、取り除くのであれば、その柱がなくても耐力が保てるような補強(近くの別の柱を移動させるとか、新たに強固な梁を渡すなどかなり大掛かりなこと)をしなければなりません。

枠組壁工法の場合も基本的な考え方は軸組工法と同じです。枠組壁工法では
壁で荷重を支え、外力に対抗する壁を耐力壁といいます。この壁は動かすことはできないものと考えてください。耐力壁は、建物にバランスよく配置されることが大切ですので、同一方向に別の耐力壁を設けるなどの方法をとらないとバランスがくずれた耐震性が低い建物になってしまいます。

また、
耐力壁に設置された窓を大きくしたり、ドアを新設したりするのも、図面などでチェックしたうえで、判断することが必要です。同様の考え方は軸組工法でも大切です。柱や梁などの縦横の材料に注意するだけでなく、筋交いのように斜めに材料が入っている壁は、枠組工法の耐力壁と同じだと考えてください。くれぐれもリフォームで筋交いをカットしてしまうなどということがないように。

では、リフォームを成功させるコツを次のページでみていきましょう。

軸組工法とは?
枠組壁工法とは?
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