奨学金は優遇された借金だが、それが重要である
「返す奨学金」は、言葉を換えれば「借金」です。お金を借り、将来返済する責任を負うわけですから本質は借金です。しかしきわめて優遇された借金であり、意味のある借金です。まず、奨学金を借りることで、キャリア形成が可能になります。高卒の年収より大卒の年収は高くなります。これは高い能力が高い報酬をもたらすということですが、生涯収入で数千万円の差になります。就職が4年遅くなって、数百万円の借金をしても価値があるわけです(ときに、非合理的なまでに差がつくこともあります)。
また、奨学金の条件は一般的な借金と比べて優遇されています。まず、在学中は返済時期を猶予されるのが通常です。日本学生支援機構の奨学金(第二奨学金、利息つき)の場合、在学中は無利息であり、その後の利息についても年利3%を上限としています。
一般の借金に数年以上の無利息期間が与えられるのは例外的ですし(一週間無利息とか30日無利息をうたう広告を見れば明らかですね)、金利も低いものとなっています(借入額から考えれば年利10%を下回ることは通常困難でしょう)。
奨学金は優遇された借金ですが、それこそが奨学金の重要なポイントです。そして、借金である以上は、返済しなければならないお金であることを、借りる側は自覚することが大切です。返済の前提はもちろん、卒業後に就職し(正社員)と就業による所得を得ることになります。(困難である現状については次ページ以降で補足します)
親が学費を出したが、老後のお金がない、も本末転倒である
一方で、「親が学費は出すべき」という意見がありますが、これを当然のものとすることには注意が必要です。というのは、一見すると普通に働いている両親であっても「子の学費と自分の老後の生活費」の二重負担が困難であるケースが増えているからです。最近増えていると感じるのは、「子の教育費は出したけど自分の老後のお金が足りない」という親世帯です。こうした世帯は社会人になった子に扶養を求めます(こづかいなどの形でも実態は扶養です)。
子が親を支えるのは道義かもしれませんが、子も自分の生活を支える力がないのに親の面倒をみることになり、これは厳しい負担です。
もし、親に学費を出してもらうのであれば、同額以上の扶養を親にする覚悟を子はするべきです。逆に奨学金をとって、学費は自分で返すので、親の生活は親自身にやりくりしてもらうのも考え方です。
親の年収が600~800万円はあっても油断はできません。学費を親に頼り切ると、実はその負担は将来、子(自分)に返ってくるということも考えておく必要があるわけです。
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