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大学の学費:親が出すか?奨学金をとる?(3ページ目)

学費を返せなくて困る人が増えているというニュースがあります。奨学金を利用するのと、親が学費を出すのとでは、どちらが良いのでしょうか。冷静に論点整理してみます。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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学費に関する親子の協力体制が必要になる

奨学金をとることは恥ずかしい話でも何でもありません。親の世代も子自身もこの点については意識を変える必要があると思っています。
しかし同時に、奨学金をとった以上は、それを返さなければいけない(貸与型の場合)ことだけは覚悟する必要があります。

奨学金の最大のリスクは、卒業後にきちんと正社員になれず、奨学金の返済余力がない状態になることです(NHK等が指摘しているのはまさにこのテーマ)。ただし何でも強制執行するわけではなく、一定の猶予期間があり(経済的困窮であれば5年など)、次に親族(保証人)にその請求が行き、最後の手段として訴訟や強制執行があるのです(しかも、返済能力があると考えられる者から優先して強制執行されるのが通常)。

ニュースはつい特殊なケースを取り上げてしまいますが、ほとんどの場合は奨学金の返済保証人に親が入っており、教育費の問題は親と子が協同して考えることが重要になると思われます(保証人の親に請求が行けば老後資金が減ることになります)。返済額は月額1~2万円程度ですから、親が一次的に肩代わりすることも考えてみるといいでしょう。もちろんその分は将来の老後資産ですから子は返さなくてはなりません。

また、子の就職がうまくいかないときは、可能な延納手続きを行いながら、協力して返済への道筋を考えるべきです。アルバイトで返済に励むのも一考ですが、時間がかかればキャリア形成の道筋をなくすおそれもあります。優先順位はあくまで正社員になることにしておきましょう。(大企業ではなく、つぶれなさそうな中小企業を探してみることをおすすめします)

逆に良くないのは、教育費の問題を子が無自覚であることです。これは奨学金でも親が負担する場合でも同様です。在学中からこの問題は親子が意識を共有していくことが求められます。

仕事の能力として考えると、大学で学んだ知識より、就職後の経験のほうが価値が高いかもしれませんが、大卒資格そのものが生涯賃金に与える影響は無視できません。また、大卒だから得られる業務経験もあり、奨学金を得て大卒することは、大学を諦めて高卒で就職することより有効であると思います。

奨学金を返せない、というのは奨学金返済の問題だけでなく、生涯にわたった生活設計を考えるスタートラインに立てていない、ということです。ぜひ、無関心にせず、相談などもしながら解決の道筋を探って欲しいと思います。

■   ■

(補足いくつか)
●返済を不要とする公的な給付型の奨学金制度は拡充すべきと思いますが、こうした奨学金は明らかに優秀な人材にのみ支払われる可能性があります。適切な運営をしても、普通の就学希望者をもれなく救う対策にならないことは指摘しておきます。卒業後所得が低い場合の減免ないし免除制度については検討されてもいいと思います(卒業前の審査だけでなく)。
●奨学金を滞納している人が、消費者金融や各種ローンを借りられなくなることについては反感が多いと思いますが、むしろ賛成します。もともと返済しなければいけない高額の債務がある者が、それ以上の高金利のローンを利用すべきではないからです。高利の借金(消費者金融等)で低利の借金(奨学金)を返すことはさせてはいけません。
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