中古住宅・中古一戸建て/中古住宅の購入術

中古住宅嫌いが日本の家を短命にする?(2ページ目)

欧米の家に比べて短命だと言われている日本の家。その理由の一つは中古住宅の人気がないことです。なぜ、日本では中古の住宅の人気がないのか、今回はそのあたりから日本の家の寿命について考えます。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

既存住宅の流通が増えない理由-売る場合

次に、既存住宅を売る人の立場から、流通の問題点を考えてみます。

中古住宅を売ろうとするのは、多くの場合住み替えを予定しているときでしょう。となると、できるだけ早く買い手を見つけたいために、多少安い売却価格でも妥協する人は多いのではないでしょうか。

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築年数を経ても価値が認められるようになれば、良質な既存住宅が市場にもっと増えるでしょう
また、既存住宅にお金を掛けて性能を高めたり、見栄えをよくしようと考える人が少ないため、魅力的な既存住宅が少ないこともある思います。これは耐震改修はともかくとしても、日本の住宅市場ではリフォームで内装や設備機器を新しくしても、売却金額にそれと同等の金額を上乗せしにくいという背景があるでしょう。

こういった状況が次第に古い家の価値を下げることになり、既存住宅の人気低下につながっているような気がします。

流通を増やすために努力している会社も

こうして見てくると、なかなか流通量が増えそうにない既存住宅市場ですが、古い家の中にも良質なストックが確実に増えていることも事実です。実際に、住宅メーカーやリフォームメーカーの中には、既存住宅売買を促進させるために、努力しているところも出てきました。

例えば、東京急行電鉄が行っている「ア・ラ・イエ」という事業は、沿線の既存一戸建てをリノベーションして所有者と共同で売り出すという仕組みです。耐震基準適合証明書を付け、最長で10年の保証を付けていることが購入者の安心につながり、実績を増やしているそうです。

また、旭化成不動産は旭化成ホームズが施工した中古物件「ストックへーベルハウス」の流通に力を入れています。「ストックへーベルハウス」は、築30年まで無料で行われる新築のへーベルハウスの定期メンテナンスシステムをそのまま引き継げるなど、新築した場合と同等のメリットを付けています。

そのほかにも、中古マンションのリノベーション事業を積極的に行っている会社も少しずつ増えてきています。こういった民間の力もあり、わずかではありますが、良質な既存住宅の流通は増えつつあることも事実です。

良質な中古住宅が流通すれば日本の家も長生きになる

既存住宅の最大のメリットは価格が安いことです。少ない予算で住宅を手に入れられることは、月々の返済負担を小さくすることができたり、返済期間を短くできるなど、買う人にとって大きなメリットになります。余った予算を家具やカーテン、照明などに振り分けたり、リフォームでさらに住宅の質を向上させることもできるでしょう。

けれども、既存住宅が日本でもっともっと流通量を増やしていくには、既存住宅の取得税軽減や、良質な既存住宅にはローンが借りやすくなるなど、制度の改革が進むことが望まれます。そして、新築と同様の高性能な既存住宅を買うことが、新築住宅を買うことよりメリットが生まれてくるようになれば、中古住宅の流通量が増加してくるでしょう。新築住宅をあきらめた人がしかたなく既存住宅を買うのではなく、良質な既存住宅を積極的に買う人が増えてくるわけです。

そんな時代にするために、私たちにできることは、どんなことでしょうか? これから家を建てる人なら、耐久性や耐震性など基本性能の高い家を建てることが求められます。そして、すでに建築した人は、定期的に適切なメンテナンスをしましょう。そうすれば、古くても味わいのある魅力的な家のストックが確実に増えていきます。良質な住宅であれば既存住宅でもかまわないという考え方が広まれば、日本の家はいまよりもっと長生きになると思うのです。
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