この普及に弾みを付けたのは国・地方公共団体等からの助成制度でしたが、現在では自然エネルギー全般に対する「再生可能エネルギー買取制度」が中心になるとともに、「ゼロエネルギー住宅」へと基本的な考え方も大きく進化してきています。その現状と今後の方向および賃貸経営への関わりを考えてみましょう。
太陽光発電に対する助成制度の現状
太陽光発電が注目されています
地方公共団体での補助金制度は、継続・縮小・廃止など地域によって対応が異なります。お住まいの地域の補助金制度を調べるには、「全国の補助金がわかる」(外部サイト)などを利用すると簡単に把握できます。
ちなみに東京都では、2015(平成27)年7月から2017(平成29)年3月まで利用できる補助金制度「既存住宅における再エネ・省エネ促進事業制度」が継続されています。詳しくは、こちら(外部サイト)をご覧ください。
再生可能エネルギー買取制度について
太陽光発電のさらなる普及を後押しするため、2009(平成21)年11月から、太陽光発電の余剰電力買取制度が始まり、1kWhあたりの買い取り価格が48円でスタートしました。2012(平成24)年7月から、対象を太陽光発電以外の再生可能エネルギー(風力、地熱、水力、バイオマス)にも拡げ、余剰電力買取から全量買取に制度変更されています。1kWhあたり48円でスタートした買い取り価格は、技術革新による発電設備費用の下落に伴い徐々に引き下げられ、2016(平成28)年度は、一般家庭の太陽光発電10kW未満の出力制御対応機器設置義務なしで31円、出力制御対応機器設置義務ありで33円の10年間買取となっています。
太陽光発電からHEMS(ヘムス)への進化
太陽光発電が最初のピークを迎えた1999(平成11)年頃から、日本国内全体で省エネルギーを考えるように意識の変化が起こってきました。その意味から太陽光発電だけでなく、家庭で使用するすべてのエネルギーを節約してゆくための管理システム、「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」、略称でHEMSという考え方が提唱されるようになりました。家電や電気設備とつないで、電気やガスなどの使用量をモニター画面で「見える化」したり、家電機器を「自動制御」したりするもので、政府の「グリーン政策大綱」では、2030(平成42)年までにすべての住まいにHEMSを設置することを目指しています。
太陽光発電からゼロエネルギー住宅への進化
太陽光発電、再生可能エネルギー買取、HEMSなど、日本でも省エネが進んできましたが、日本トップクラスのメーカーの省エネ住宅ですら、ヨーロッパ諸国の省エネ住宅の断熱性能の3分の1程度だと言われているのが実状です。我が国の省エネ環境を整備してゆくため、経済産業省では「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」事業を推進しています。ゼロエネ住宅では、次の5条件を満たす必要があります。
- 住宅内での消費エネルギーと作りだすエネルギーの差し引きがゼロ
- 断熱性能が「省エネ法」の定める基準以下
- 自然エネルギーを取り入れた、先進性が認められる設計手法・制御機構
- 消費エネルギーおよび作りだすエネルギーの計測装置
- エネルギーを作りだすための太陽光発電システム
賃貸経営におけるメリット
太陽光発電システムの普及により設置費用は大幅に下がってきており、1kWあたり数十万円と言われる水準まで来ています。自宅よりも建物面積の広い賃貸住宅では、やや大型のシステムが設置可能なので、電力買取料金が下がってきた現在でも、一般家庭よりさらに十分な採算利回りが見込めます。意識の高い「賃貸派」が増えてきている現在、入居者が求める賃貸住宅の設備・環境水準は年々高まってきていますので、逆に言えば、住宅設備の陳腐化サイクルはどんどん早くなってきていると言えます。先進の住宅設備・環境は、競合の激しい賃貸住宅市場を勝ち抜くための必須アイテムと言えるので、太陽光発電システム、ゼロエネルギー住宅を検討してみるのも良いと思います。