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残暑に考えたい「脱エアコン生活の家」

昼間はエアコン生活だけど、朝晩は心地よい風を感じるようになったこの頃。こんな自然の風を利用する家づくりが業界でも増えています。「エアコン効率のいい家」から「エアコンのいらない家」へ??。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド

風を呼ぶ庭
シンボルツリーや池をつくることで風を呼び込む家づくりは、戸建てならではの魅力
これまで「省エネ住宅」といえば「イコール高気密高断熱」が合言葉のように普及してきた住宅業界。ハウスメーカーなどの住宅はすでに、気密・断熱性能では住宅性能表示制度の定める最高等級をクリアするところまで来ていますが、最近は高気密高断熱だけでなく、自然の力を使った「エアコンを使わなくてもすむ家づくり」をアピールするところが増えています。

太陽と風を設計するという発想

「木の家を建てることで街に森をつくる」ことを提唱している住友林業は、この7月、太陽光発電システム(PV)とオール電化を標準搭載した新商品「マイフォレスト-ソラボ」を発売。太陽光発電とオール電化という組み合わせはすでに業界でも多くの商品が開発されていますが、同商品のユニークなところは「涼温房」という考え方を採用している点です。

ソラボ外観
庭の落葉樹やパーゴラをつたうツタが日差しを遮って風を呼び込む(「マイフォレスト-ソラボ」外観)
「涼温房」とは、日本の伝統・先人の暮らしの知恵を生かした、冷暖房に頼りきらない住まい方の提案。日照や通風を最大限活かした設計手法により、夏には「涼しさ」を呼び込み、冬には「温もり」をつくりだすというもので、もともと日本の伝統的な木造家屋がルーツ。日本の伝統工法である木造軸組の家を重んじてきた、同社ならではの強みが生かされています。
夏イメージ
風を設計して夏の涼しさを作り出すイメージ図。深い軒や庭の落葉樹で強い日差しを遮り、通風床やトップライトを設けて風の通り道をつくる(写真提供:このページいずれも住友林業)

通風床イメージ
1~2階の床に通風床を設けることで、外から取り込んだ涼風の通り道ができる
この「涼温房」効果を実証するため、「エコ診断カルテ」も作成。居住地域と周辺の住居密集度、建物断熱仕様などと、アメダスの月別気象データをもとに年間の「冷暖房負荷予測」「CO2排出量推移」「冷暖房費比較」を提示し、効果を住まい手自身が実感できる工夫もしています。試算では、この新商品を旧来型の「新省エネルギー基準(次世代省エネ基準の前の基準)+電気・ガス併用住宅」と比較した場合、年間光熱費が約18万円低減でき、年間CO2排出量も2000キログラム削減できるとしています。

林業会社でもある同社は、国産材の利用促進を掲げた環境運動も提唱。木材を家に使えば、木がそれまで吸収したCO2を家の中に炭素として固定し続け、木材伐採後も苗木を植えて再び森を育てれば、新たにCO2が吸収される--そんなサスティナブルな循環型社会への貢献策も訴求しています。

「エアコン効率のいい家」から「脱エアコン生活の家」へ

外欄間と塗り壁
夜間の涼風を取り込める外欄間(左上部)や塗り壁は、涼を住宅内にたくわえる提案として各社で増えている
ミサワホームは「ECO・微気候デザイン」を2006年から商品開発テーマとして掲げ、シンボル商品「アーバンデザイナーズ ビキ・フェミィ」を発売。南面の大開口から北側の窓に向けて風の通り道を設け、東西の開口を少なくして日射をコントロールすることで「エアコンがなくても夏涼しく冬暖かい」住まいを提案しています。

風通しとともに、プライバシーを守る目隠しの役目も果たし、外観のデザイン性にも一役買う「ウォールルーバー」システムは、2006年グッドデザイン賞を受賞。天井付近の熱気を排出する効果のある「欄間付ドア」などは、昔ながらの日本の伝統住宅にあった「よしず」や「欄間」の考え方とデザインを現代風にアレンジしています。

次ページでは、「街まるごと環境共生住宅」と最近話題になったプロジェクトを紹介します。
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